2000年から3歳以上になったこの重賞は、牝馬の秋のビッグレースに向けて始動の一戦。そういうレースの位置付けが年ごとに強くなっている。だいたい半分の馬にはオーバーホールと静養を兼ねての北海道滞在の意味があるから、そうそうムキになって荒っぽいレースには持ち込みたくない。また、たとえば今年のシェルズレイのように折り合いを欠いて飛ばして連続失速している馬は、もう同じようなレースを繰り返しているのではなく、新しい一面を引き出したい。そういう秋の展望を広げるのがテーマの馬が多い。さらには開幕第一週とあって、絶好の芝状態ゆえ先行馬有利が決まったパターン。これまで7回のうち4回までが「逃げ切り」だった。
今年もまるで絵に描いたような「行ったきり」の決着で、勝ち時計の1分46秒7は昨年とも、一昨年とも同じ。3年連続して同じ時計だった。これで8回のうち5回までが逃げた馬がそのまま押し切ったことになる。
といって、初重賞制覇のアサヒライジングにはきわめて意味のある完勝であり、レースの流れは確かに楽だったが、決して恵まれた1勝ではない。牝馬3冠の4、3、2着を中心にあと一歩の詰めの甘さに泣いてきた善戦ホースだったが、これでもう折り合いだとか、変にスローに落として逃げ込みを計るとか、小細工にとらわれることなく、改めて先行できる利をフルに生かすことに徹していい。そういう展望が完成した。母の父はシンザンの代表産駒でもある菊花賞のミナガワマンナ。スタミナの裏づけはある。この秋は昨年以上に強気に、自信をもったレース運びに徹することを期待したい。
2着のイクスキューズは体が戻っただけでなく、また一回り成長したかのようにプラス16kg。巧みに流れに乗りしぶとく粘り込んだ。意外性のないのがつらいところで、この馬の場合、まったくといっていいほどGIホースのイメージが沸いてこないが、やがて無事な強み、健康でタフな強みがいつか実を結ぶのかもしれない。
ディアチャンスの評価は微妙。やっと馬体が充実して目下2連勝だったが、468kg、456kgときて、今回は当日輸送なしの充電の北海道で446kg。また寂しく見えるようになってしまった。そのため無理することなく最後方からの追走になったと思われるが、ここで体が減ってしまったのは痛い。ローテーションが難しい。
期待したフサイチパンドラは特に重くもなく好馬体。スローにも近い流れ必至だから早めのスパートに出てくれると考えたが、ロングスパートはかけなかった。そう切れるタイプではなく上がりの勝負はつらいだろう。今週の札幌記念にも登録があるが、福永騎手にはアドマイヤフジがいる。休養明けの夏の北海道で連闘しても意味がないと思われるが、どのレースを狙っているのだろう。人気のアドマイヤキッスは一瞬の切れ味勝負型。こういう流れは望むところで、鋭く伸びかけたがゴール寸前は迫力負けの印象がある。昨年の3歳秋のエリザベス女王杯時が460kg。札幌に滞在の今回は440kg。締まったというより丸みのない馬体にちょっとひっかかるところがあった。