先週に引き続き、道営ホッカイドウ競馬について書く。11月13日に今年度の全日程を終了し、計83日開催で、馬券売り上げは119億2096万900円。馬インフルエンザ騒動の余波を受け開催日数が3日減少したことや、依然として不況が脱し切れていない北海道経済の現状などにより、当初計画との比較では90.5%に終わったものの、ほとんど前年(119億3003万円)と変わらぬ数字は残した。
なお1日あたりの売り上げは1億4363万円で、前年比2.3%増。ただし、入場人員は逆に5966人と前年比8.1%の減少である。
売り上げを下支えしたのは、南関東競馬の在宅投票システム(SPAT4)が通年稼動したことやネットバンクが運用開始したことなどによる部分が大きい、とされる。
また、来春までのおよそ半年間にも及ぶシーズンオフに、南関東などの場外発売を全道13箇所の施設(各ミニ場外、門別競馬場)で実施する。最終的な収支はその分の売り上げを加算した上で弾き出されることになる。
ところで、ホッカイドウ競馬について、道農政部から「旭川競馬場より2008年度をもって撤退」「2009年及び2010年で赤字体質から脱却し収支均衡を目指す」「この見通しが破綻する場合には競馬事業を廃止する」「門別競馬場に開催の大半を集約し、札幌開催はゴールデンウィークなどの売り上げが見込める一時期にとどめる」「生産地が主体となった新運営母体を組織し、道競馬事務所は廃止する」などという「北海道競馬改革ビジョン(素案)」が発表されたのは去る9月のこと。
ほとんどこれは生産地にとっても「寝耳に水」のニュースであった。とりわけ、2009年と2010年の2か年の間に「赤字脱却=収支改善」が実現しない場合には競馬事業を廃止する、とした道側の強い姿勢に大きな危機感を抱いた。
さっそく日高管内の各町や農協などで組織する「日高軽種馬振興対策推進協議会」(会長・谷川弘一郎浦河町長)は、地元主導で新たに道営ホッカイドウ競馬を運営する母体作りに着手するとともに、先に示された道側の改革ビジョン素案の中にある「廃止」の二文字を削除するよう要望書を提出した。生産地競馬として、今後は名実ともに「地元主体の組織による運営」を余儀なくされることとなり、現在、門別競馬場のある日高町に各町や日高軽種馬農協から職員5名が出向し、新しい運営母体(新公社)設立のための準備作業に入っている段階と聞く。
従来、ともすれば「お役所競馬」と酷評されてきたホッカイドウ競馬は、道競馬事務所の解散と新公社への運営移管により、これまでよりもずっと民間の活力を導入できる体制が整えられるものと思う。だが、そこで何とも障害になってくるのが「門別競馬場主体の開催」である。
旭川競馬場は、“家主”の上川生産連に支払う施設賃貸料などの負担が大きいこと、及び、施設の老朽化により改修費が今後莫大にかかってくることなどの理由から早々に撤退することが決定した。また札幌競馬場はJRAの施設であり、こちらも今後の施設使用料負担が増大すると見込まれる。消去法により、残る手立ては唯一の自前の施設である門別競馬場をフル活用するより道がないのだが、如何せん、周辺人口はかなり希薄で、集客力に乏しい地理的条件に立地している。
新公社への移管とともに、まず当面着手する仕事として
1.ナイター設備
2.既存のスタンド増築
の二つが上がっているが、これらはいずれも多額の資金が必要となる。地元の日高を中心に、果たしてどこまで資金を捻出し門別競馬場のグレードアップを実現できるか。
とにかく、生産地としては、「ここまで来たらやるしかない」という背水の陣なのである。道の責任で道が自力で立て直せ、と言ったところで、おそらく早々に廃止へとつき進むのは明らか。生産地である日高が今、新たな方法と組織とで道営ホッカイドウ競馬をどのように運営して行けるか、「試されている」のである。