あっという間に年の暮れになってしまった…ように感じるのは私だけだろうか? 年齢的なものによるのか、それとも、日々漫然と日を送っていることに起因するのか。
今年1年を象徴する漢字は「偽」に決定したという。他には「疑」なども“有力候補”として挙げられていたが、大方の予想通り「偽」に決まった。それにしても、こんな漢字が世相を反映しているとは、何と情けないことか。
競馬の世界で、仮に今年1年を象徴する漢字を公募したとしたら、果たしてどんな字になるだろう。人によって意見は様々だろうが、全体を見渡した時に、やはり浮かぶのは「耐」というような漢字だ。とりわけ、地方競馬や日高の中小生産牧場にとっては、ひたすら耐えるしかないような1年だったのではなかろうか。
さて、業界紙「馬事通信」(道新スポーツ社)の12月15日号は、恒例の「2007年馬産地10大ニュース」を掲載している。ちょっと、その項目を紹介してみよう。
1.日本が念願の「パートI国」入り果たす
2.TCK大井競馬が現役外国(出走)経歴馬導入へ
3.馬インフルエンザが36年ぶりに発生猛威
4.07市場おおむね盛況で終幕
5.サンデーサイレンス13年連続リーディング首位を手中に
6.道営競馬09年度から新公社体制に
7.ウオッカ64年ぶり、戦後初となる牝馬のダービー優勝
8.ダーレー・ジャパンが馬主資格取得、返上
9.市場取引限定競走&市場取引奨励賞が廃止へ
10.フォーティーナイナー、種牡馬生活引退
完全に「パクリ」となってしまったが、生産地関連の出来事としては、これでほぼ網羅されており、おそらく異論はそうあるまい。敢えて、もう一つ項目を挙げるとすれば、2月から3月にかけて岩手競馬に存廃問題が浮上し、ギリギリのところで廃止の危機を免れた出来事が忘れられない。ばんえいは周知の通り、昨年暮れに帯広市による単独開催が正式決定し、急転直下、存続が決まった。岩手の場合は、累積赤字が巨額だったため、競馬組合への融資を巡って県議会での議論が伯仲し、二度にわたる議決はいずれも僅差だった。
結局、岩手県と盛岡市、奥州市の三者が計330億円を組合に融資することで、辛うじて存続できることになった。そして今春から報償費その他の開催経費を大幅に削減し、スタートを切ったわけだが、年度途中二度も収支計画を見直す必要に迫られ、現在に至っている。
生産地としては、岩手競馬の存在はかなり大きく、そのために、売り上げ回復を側面からサポートするべく、日高軽種馬農協と社台スタリオンが種牡馬の「種付け権利株」を岩手競馬に贈呈したことなども記憶に新しい。
年度途中にも拘わらず、二度の経費削減に踏み切った岩手競馬は、現在、1着賞金の最低が15万円まで下落し、その昔「地方競馬の優等生」と称された時代と比較すると、まさしく隔世の感がある。15万円と言えば、金沢、笠松、名古屋、福山、佐賀などと同程度の水準である。この賞金水準まで落ちると、1歳馬を市場などで仕入れることはかなり困難で、結果的には、更なるレースの質の低下が避けられない。中央からの移籍未勝利馬やどこかに難のある(したがって価格の安い)馬しか入って来なくなるからである。
とはいえ、生産者としては、生産馬の全てが希望通りの価格で販売できるわけでは決してなく、そうした地方競馬の馬主もまた顧客にせざるを得ない。血統が平凡だったり、あるいは牝馬というだけで、生産原価を大きく割り込むような今の状況では、何とも先が思いやられるばかりだ。10大ニュースの第4項目は、市場がおおむね盛況に終わったことが挙げられているものの、個別に見るとそれぞれの価格はかなり厳しい結果だったというのが偽らざる実感である。全体的に低価格馬が増えているように感じるのは、廉価な馬でも活発に競り合うような元気の良い地方競馬関係者がすっかり姿を消してしまったことにも原因があるのだろう。
おそらく、また来年もひたすら「耐え忍ぶ」年になるような気がする。来年の今ごろには、果たしてどんな10大ニュースが出揃っているだろうか。
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