スマートフォン版へ

AJCC

  • 2008年01月28日(月) 13時00分
 4歳馬がたった1頭しか出走せずベテランホースの多い組み合わせだったが、勝ったエアシェイディが7歳馬なら、2着トウショウナイトも7歳馬。長い歴史の中、さすがに7歳馬同士の1〜2着独占は初めてのことだった。エアシェイディがここまで重賞2着6回という奇妙な成績を残してきたことは知られるが、もう重賞300勝を突破するサンデーサイレンス産駒の中で、母の父ノーザンテースト。そういう組み合わせの産駒が2000mを超える距離の重賞を制したのも、たしかローゼンカバリーがいた程度できわめて珍しいケースなのである。

 エアシェイディの勝ち味の遅さは速い脚が続かないところにあるが、今回はスパートしようとする4角を回った地点で、前にあまり手応えの良くない人気のドリームパスポートなど4頭が並び、コンビの後藤騎手は仕掛けをワンテンポ遅らすことができた。エアシェイディの初重賞制覇には、その長所も泣きどころも知り尽くしている後藤騎手のファインプレーが重なっている。エアシェイディがAJCCを2分11秒台で2着したのはもう遠く3年も前の4歳春のこと。やっと重賞に手が届いたのは素晴らしいが、しかし、当時より強くなったかというとそれは疑問で、今回は相手が……だった。

 注目のドリームパスポートは転厩初戦。もうほぼ完成された5歳馬でもあり、また仕上がった状態でのトレード。環境の変化や、直前の追い切り手法の微妙な変更など応えないと見られていたが、冬場とはいえプラス10kg。太くもないが、研ぎ澄まされた印象には欠けた。ステイゴールド一族であることを考えると、もっとシャープな線が前面に出たほうがいいのかもしれない。突然のトレードで新しい陣営には手探りの部分があったのはたしかだが、実は、この次のほうがもっと仕上げに神経を使うことになる。

 どこの民間トレセンとの連係で、どういう仕上げの手法を取り入れるのか、意外に大きなテーマになる。松岡騎手とのコンビはしばらく続けたほうが絶対にプラス大と思える。というのはこの日、関西の「平安S」を8歳クワイエットデイ(父サンデーサイレンス)が快勝したが、角田騎手の勝利のコメントはきわめて示唆的で「先生はいつも好きなように乗れ」といってくれる、というものだった。エアシェイディの後藤騎手の今回の快勝にも似たトーンがあった。ドリームパスポートの転厩の理由にはオーナーサイドと調教師との起用騎手についての意見の違いもあったと思われ、それだけに新しいコンビの松岡騎手に、また外からの強い指示がでたりするのではないかと、ちょっと心配なのである。

 7歳トウショウナイトは好不調の波の大きい馬で、また好調期が訪れてきた。今回は坂上で前が狭くなるシーンもあり、まだまだ衰えなど少しもないことを示したが、勝ったエアシェイディと同様、かつてのピーク時より強くなったとか、さらに良くなったというわけではないから、この次の評価が難しい。

 ドリームパスポートと同じ5歳アドマイヤメインの復調気配も残念なくらい乏しかった。冬場で体調を整えるのが難しい大型馬とはいえ、また増えて514kg。ダッシュも鈍く、1000m通過61.2秒の楽な流れなのに3角過ぎでもうかわされてしまうようでは、まだまだ時間がかかるのだろうか? 史上初めて16頭の多頭数で行われたAJCCは、3歳馬の路線と同じく今年の古馬の中距離路線の混戦ぶりをそのまま予感させるフルゲート。そのうえ、この次に結びつけるのが非常に難しい結果でもあった。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング