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軽種馬生産振興会総会

  • 2008年02月05日(火) 20時30分
軽種馬生産振興会総会1

 日高では各町ごとに軽種馬生産牧場が集まって親睦団体を結成しており、それが「○○軽種馬生産振興会」という名称として活動している。

 各町ごとに…が原則だが、古くからの名残からか、必ずしも各町に一つずつあるのではなく、例えばここ浦河の場合には、未だに「浦河」と「荻伏」とが別個に振興会を組織しており、当面合併する気配はなさそうだ。さらに、近年「合併」した新ひだか町の場合も、行政区分は確かに一つになったわけだが、この振興会は依然として静内と三石とに分離したまま。長年、構成員も地域も異なる別個の団体として活動してきた経緯から、簡単に「合体」してしまうことには抵抗があるのである。

 また、著しく生産牧場数が減少している町などは、実質的に「振興会」という組織そのものが有名無実化しているところもあって、事情はそれぞれ様々である。

 さて、2月の声を聞くと同時に、生産地では順番にこの「生産振興会」の年次総会が開催される。日高の場合には各振興会の上部組織にあるHBA日高軽種馬農協による「地域懇談会」も同時に行なわれるため、各町一斉にというわけには行かない。日程をずらし、各振興会ごとにHBAが同じことを繰り返し生産者に向けて説明し理解を求めることになる。

 今年は2月4日の浦河を皮切りに以降、7日(木)三石、8日(金)新冠、9日(土)平取、12日(火)荻伏、13日(水)様似、15日(金)門別、18日(月)静内と続く。

 今年の総会日程はまだ始まったばかりで、7日の三石から先がそっくり残っているのだが、昨年までと比較すると明らかに大きな変化が日高に生じている。

 その一つは、組合員戸数である。HBAによれば、2007年末現在で、日高管内の組合員戸数は全部で965軒。そのうち、実際には繋養馬のいない組合員もあり、実質的には868軒にとどまる、というデータが公表された。確か昨年の時点では組合員数はまだ辛うじて1000軒の大台を確保しており、だが繋養馬のいない牧場があるため、実数としては900軒台と聞いたのを記憶している。それがわずか1年で、さらに100軒ずつも減少してしまったことになる。

 とはいえ、こういう傾向が今後も一段と顕著になって行くであろうことは議論の余地があるまい。その原因はただ一つ、日高の生産馬を取り巻く環境が確実に厳しくなってきていることによる。

軽種馬生産振興会総会2

 そして、この965軒の中でも、例えば、経営主が高齢になってきているにも拘わらず後継者が不在のケースや、仮にいたとしても、その後継者が独身で、実質的にたった一人でようやく日々の作業をこなしているケースなど、一言で生産牧場と言っても実態はかなり千差万別なのである。

 そしてもう一つの新たな動きはJRA日高育成牧場に関することだ。JRA日高育成牧場は主としてこれまで毎年春に開催される「ブリーズアップセール」に上場するJRA育成馬の調教を手がけてきたが、同時に、生産や育成に関する研究も行なっており、いよいよ今年の配合から、上限10頭の範囲でサラブレッド生産にも本格的に乗り出すのだという。

 今年の配合であれば誕生は来年になり、そのまま同牧場内で育てられ来る2011年春のブリーズアップセールにそれらが上場されることになるらしい。

 上限10頭で、そのうち何頭が無事に受胎し翌春に分娩するものか今の段階では何とも判断できないが、従来の「研究」という概念から一歩踏み出して、いよいよJRAも生産活動を開始することになったのである。

軽種馬生産振興会総会3

 これに対し、生産者の受け止め方は「民業圧迫に繋がるので慎重にやって欲しい」という否定的な見解から「生産〜育成〜競走に至るまでの重要なデータを得られることが期待でき、生産地にとっても役に立つはずだ」という好意的な見方まで、実に様々であり、ことは単純ではない。

 今の段階ではこれ以上のことが言えないのだが、考えられる可能性としては、例えば各種データに裏打ちされたJRA生産馬が仮に期待以上にレースで好成績を収めた場合、購買者である馬主層から「もっとJRA生産馬を増やして欲しい」という要望が出てくる恐れがあること。何年も先のことになろうが、日高の生産者としては、そんな“官製競走馬”には負けないような馬を生産して行く以外に方法がない。少なくとも、JRA日高育成牧場があくまで「研究」の一環として、サラブレッド生産を試験的に導入すること自体には、それなりの大義名分があるのだから。個人的には、「市場取引馬奨励賞の廃止」などよりはずっとましだと考えている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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