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ダーレーと社台

  • 2008年02月19日(火) 23時49分
 先週触れた通り、生産地では今種牡馬展示会がピークを迎えている。
2月18日(月)は日高町の「ダーレージャパン・スタリオンコンプレックス」、その翌日19日(火)には「社台スタリオン」にて開催された。そして20日(水)には「優駿スタリオン」、21日には「HBA日高軽種馬農協門別種馬場」と「ブリーダーズスタリオン」と続く予定で、来週にかけてびっしり日程が立て込んでいる。

 18日(月)のダーレーは、時折日が翳ったものの、概ね好天に恵まれ、多くの関係者や競馬ファンなどで賑わった。今年、ダーレーは一気に新種牡馬4頭を含む7頭体制でシーズンに臨む。その中でもっとも話題を集めているのが言うまでもなくアドマイヤムーンである。

アドマイヤムーン

 おそらく、この日の来場者の多くがアドマイヤムーンをじっくり見るために訪れたものと思われる。主催者発表で900人もの人々がここに集合し、40億円でトレードされたこの馬目当てに11時の開始時間を待った。

 ところが、この日の門別は、確かに晴れてはいるものの、かなり風が冷たく、おまけに7頭の種牡馬のうち、アドマイヤムーンの登場が一番最後になったために、寒さに耐え切れなくなった来場者が飲食ブースの並ぶ大型テント内に“避難”する一幕もあった。

 最初にアドマイヤムーンを展示してしまうと途中で帰る人が続出するかも知れない、という配慮からだと思うが、如何せん、気温が低すぎてムーン登場までじっと展示会場にて立ち続けるのは相当忍耐のいる仕事であった。

合田直弘氏

 7頭の種牡馬を順次紹介していたのは本サイトでもお馴染みの合田直弘氏。ところが合田氏は背広にコートを羽織っただけの姿で登場し、マフラーも帽子も着用していなかった。さすがにこの服装では、いくら何でも震え上がったに違いない。

 さて、その翌日は「社台スタリオン」の展示会。例年あまり好天とは縁のない社台スタリオンの展示会だが、今年は微風晴天と、近年まれに見る過ごしやすい天候に恵まれた。

 こちらは総勢28頭を誇る日本一の種馬場であり、昨年のディープインパクト騒動? 以来、来場者を大幅に制限する措置を取っている。

 予め各生産者やマスコミ関係者などに限定して「招待状」を送り、それを持参しなければ展示会場には入れないシステムになった。

 おそらく感覚としては一昨年辺りがピークだったと思うが、日高の展示会ではまず見かけない一般の人々がかなり多数混じっており、そのために顧客の生産者サイドから「馬をじっくりと見たくても見られない」という苦情も多かったはずなのだ。

 そうした声に配慮して、昨年のディープインパクトのお披露目は都合3回に分けて実施され、混乱は未然に防ぐことができた。

ダイワメジャー

 今年の社台の目玉はダイワメジャーだが、毎年ここには鳴り物入りでスタッドインする有名馬がいるために、おそらく来年以降もこうした「入場制限」が続くものと思われる。

 人集めに躍起になっている日高の各種馬場から見れば何とも羨ましい話だが、前述したように、ここには計28頭もの種牡馬が繋養され、昨年はついに4000頭もの繁殖牝馬を集めた。だいたい日本で繋養されている繁殖牝馬はおそらく1万頭前後だから、そのうちの4割が社台スタリオンに集まった計算である。

 いちいち列記する必要もないくらいに、リーディングサイヤーランキング上位に名前を連ねる種牡馬がズラリと並び、まさに圧倒的な質と数というしかない。ファンにとっても、ここには見たい馬が揃っており、やはり何らかの形で制限しなければ収拾のつかない事態になるのが目に見えている。「完全招待制」は、やむを得ない措置なのである。

 午前11時半。ダイワメジャーが真っ先に登場し、続いてローエングリンが展示された。ダイワメジャーは展示会を待たずにすでに「満口」となっており、血統、競走成績、馬体ともに三拍子揃った名馬だけのことはある。そして、今年はいったい何頭の繁殖牝馬がここに集まるものかと考えると、いささか複雑な心境にもなってしまった

 先に触れたダーレーの7頭と、社台の28頭で、たぶん今年は日本の繁殖牝馬の半数が集まることになるだろう。のみならず、以前社台スタリオンにて繋養されていた種牡馬たちが、ブリーダーズスタリオンやレックスなどに移動し、かなりの交配実績を残している。またダーレーも、新冠や浦河に、複数の種牡馬を配置している。

 これらを加えると、ダーレーと社台関連の種牡馬は、日本全体の半数どころか7割くらいの繁殖牝馬を集めることになるのではあるまいか。

 ともあれ、サンデーサイレンス亡き後、種牡馬の世界は一気に群雄割拠の様相を呈しており、サラブレッドの生産頭数が減少し続けている中、配合牝馬の獲得合戦だけは確実に激化してきている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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