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トレーニングセールと2歳戦

  • 2008年03月04日(火) 23時49分
 3月に入り、トレーニングセールを目指す2歳馬の調教もいよいよ本格化してきた。来月末にはJRAブリーズアップセールが開催される予定で、それ以降5月下旬までびっしりと日程が組まれている。

トレーニング風景


 市場の情報をいち早く発信している「馬市ドットコム」管理人の齊藤宗信氏によれば、現在の時点で判明している各市場の上場予定馬は以下の通りという。申し込み期限がまだ先だったり取り消し期間などもあるため、あくまで、予定であることをお断りしておく。

1.JRAブリーズアップセール(4月28日)中山競馬場、80頭
2.九州セール(5月12日)JRA宮崎育成牧場、10〜20頭
3.千葉サラブレッドセール(5月19日)船橋競馬場、60頭+JRA枠6頭
4.HBAトレーニングセール(5月26日)札幌競馬場、220頭前後
5.ひだかトレーニングセール(5月27日)JRA日高育成牧場、125頭+JRA枠若干数

 なお、昨年トップを切って開催された「境TCサラブレッドセール」については未定とのこと。

 ブリーズアップセールは元々頭数が固定しており、変動はほとんどないが、それ以外の市場に関してはかなりのばらつきが出た印象だ。

 どの市場に出すか? は、一番頭を悩ませる部分で、より確実に、しかもより高く売れる可能性を求めるため、前年の市場成績についつい引きずられてしまう。

 今年の場合、昨年好調だった「HBA」の人気が高く、不振だった「ひだかトレーニングセール」がやや人気を下げた印象だ。「九州セール」は、1歳市場の上場申し込みが増え、2歳が逆にやや減少する見通しから、購買者の利便性も考慮し、今年は「同時開催」に踏み切った。

トレーニング風景BTC1


 さて、今年から、JRAの「市場取引馬奨励賞」が廃止されており、購買者から見ると、必ずしも市場で落札する必要がなくなった点も気になるところ。だが、それよりも、2歳馬を買い求める側が本当に気になっているのは、「果たしてトレーニングセール出身馬が“即戦力”か?」という部分だろう。

 「JBBAニュース」2月号に興味深いデータが紹介されている。昨年度の各トレーニングセール(ただしJRAブリーズアップセールを除く)における取引馬が、その後2歳戦でどのような競走成績を挙げているのかを数値化したものである。

 それによれば、昨年の取引馬で最も活躍したのは、園田ジュニアCを勝ったアルアルアル(父クリプティックラスカル)で通算5戦4勝、収得賞金が1612万円。

 中央所属馬では、新馬勝ちの後、特別戦2着が2回あり、1586万円を獲得したアイリッシュカフェが“稼ぎ頭”のようだ。

 因みに、アルアルアルはひだかトレーニングセールで346万円、アイリッシュカフェは千葉トレーニングセールで745万5千円という落札価格で、決して高い部類ではない。

 なお、全体としては、中央で7頭、地方で14頭の計21頭が「デビュー勝ち」を果たし、前年の13頭から大幅に増加している。そして、中央と地方合わせて、2歳戦で41頭が56勝を挙げた。ただし、内訳は中央が12頭で12勝(要するに2勝目がなかなか挙げられない)、地方が29頭で44勝と、地方競馬での好成績が目立っている。

トレーニング風景BTC2


 各市場別では、「境TC」が中央3頭、地方5頭の登録で、中央2頭出走の1頭勝利、地方4頭出走の3頭勝利という成績。昨年の取引頭数は11頭。「九州」は中央3頭、地方4頭の登録で、中央4頭出走(地方からの遠征もいると思われる)の0勝、地方が5頭出走(こちらは逆に中央からの遠征か)の2勝。昨年の取引頭数は同じく11頭。

 「千葉」は中央23頭、地方10頭の登録で、中央が18頭出走の4勝、地方が10頭出走の3勝。昨年の取引頭数36頭。

 「HBA」は中央31頭登録、地方30頭の登録で、中央25頭出走の2勝、地方29頭出走の14勝。昨年の取引頭数82頭。

 「ひだかTS」は中央47頭登録、地方9頭登録、中央が37頭出走の5勝、地方が9頭出走の7勝、昨年の取引頭数66頭、という成績である。

 厳密に言うならば、これにJRAブリーズアップセール出身馬の成績も加えて検討しなければならないのと、同じ市場でも年毎にかなり競走成績にばらつきが出ているため、安易に結論が出せない部分もあることを付記しておきたい。

 勝てるかどうかは別として、登録馬が2歳時にデビューできたかどうかについては、千葉、HBA、ひだかのいずれもほぼ8割前後の数字で並んだ。これは前年の数字よりいずれも10ポイント程度上昇しており、かなり改善している。

 また全体を見渡して、やや驚いたのは、本年度の開催が未定ながら、「境TC」のセール出身馬が割に健闘していること。サンプル数が少ないとはいえ、中央所属馬で50%、地方で75%の「勝馬率」は大したものである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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