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白井透氏、新冠で講演

  • 2008年03月11日(火) 23時49分
 白井透氏と言えば、長らく日本の競馬ジャーナリズムの世界で活躍してこられた大先輩である。その昔、サラブレッド血統センターという会社を興し、数々の名著を刊行してきたことでも知られる。父は故・白井新平氏。弟に故・白井民平氏がいる。かなりの血筋と言っていいだろう。そのあたりは江面弘也氏の著作「活字競馬に挑んだ二人の男」(ミデアム出版社)に詳細に書かれている。

 1990年度のJRA馬事文化賞も受賞した。略歴を見ると、昭和43年(1968年)に前記サラブレッド血統センターを立ち上げたというから、もうキャリアは40年に及ぶ。ほとんど日本の競馬の発展とともに生きてこられた方である。現在はサラブレッド血統センターを離れてフリーとなっており、年齢は今年で65歳になる(はず)。

 そんな氏が、今エネルギーを傾注しているのが「死なないサンデーサイレンスJr号」なる名称の「競馬再生プロジェクト」である。長らく業界紙「馬事通信」にて「競馬の新潮流」と題する評論を書き続けてきた氏が、ついに行動を開始し、去る3月7日(金)、新冠町にある「新冠レコード館」にて講演会を実施するとの情報が入ったため、出かけてみた。

 “呼びかけ”の方法は二通りあり、一つは「電話作戦」。おそらく生産者名簿のようなリストを開いて片っ端から電話をかけ、参加を呼びかけたようだ。現に私の家にも女性の声で案内があった。もう一つは、当日の朝の新聞にチラシを入れる方法である。

 チラシがどの程度の範囲まで配布されたものか判然としないが、町内の友人によればこの家のような一般家庭にも入っていた由だから、あるいは日高全域にあまねく告知されたものか。

 午後3時から5時という予定時間の横に小さく「中締め後、6時までカラオケ大会」と記載されており、「いったいどんな講演会なんだ?」と思わぬでもなかったが、とにかく百聞は一見にしかず、と思い直し、会場に赴いた。

 午後3時25分くらいだったか。定刻より大幅に遅刻してしまったのだが、とにかく中に入ってみることにした。入り口には女性二人が机に座り、受付をしている。そこでパンフレットを手渡された。

 ホールに通じる重いドアを恐る恐る開くと、普段、コンサートや結婚式などのイベントに使用される広いホールの前半分におよそ200人分? くらいの椅子が並べられているものの、席に着いているのはざっと10人いるかいないか、という程度。

白井透氏

 壇上では、マイクを片手に持ち、伏し目がちに白井透氏がプロジェクトの説明を続けている。

 あまりにも少ない聴衆に、まず驚かされた。

 白井氏の考案したこのプロジェクトは、要するに、インターネット上に新たな無料の競馬ポータルサイトを開設し、新規ファンを競馬の世界に引き寄せようというものである。

 そのために氏は「馬事・競馬文化センター」という名称の株式会社を設立し、今回、改めて生産地でこの会社が取り組もうとしている事業(すなわち前記のポータルサイト)についての説明会を催し、出資者を募ろうということなのだ。

 新たな競馬ポータルサイトを構築しようとする計画は、JRAでさえ10年間にわたり馬券売り上げが漸減し続けてきている事情など考えたら、まさしく「競馬再生」のために資するところ大であろう。

 しかし「コロンブスの卵」「人類がまだ誰も考えなかった発想」「ITベンチャーだから…とてつもない可能性」といった文字が並んでいるのを見て、やや心配にもなってしまった。ここまで言い切れるのは本当に素晴らしいと絶句するしかないのだが、まずは、氏の試みをじっくりと見せていただこうと思う。果たして「人類がまだ誰も考えなかった発想」なのかどうか、をである。

 なお、今回配布されたチラシには出資金のためのスペースがかなり大きく割かれており、早々と「ザ・ホースメン」(これは世界の大手生産者10牧場に入っていただく構想らしい)の中のお二方(ビッグレッドファーム・岡田繁幸氏、カントリー牧場・谷水雄三氏)がすでにこの計画に賛同しそれぞれ500万円を拠出している旨、記されていた。

 また「案内中」として吉田照哉氏勝巳氏、晴哉氏、下河辺俊行氏、ダーレースタッド(ファーム? スタリオンコンプレックス? またはグループ全体? やや不明)等々のお名前が明記されていた。

 500万円コースが「ザ・ホースメン」、次の250万円コースが「コラボレート」(スポーツ新聞社、競馬専門紙新聞社、大手馬主、生産者)で20社、ここまでで計1億円。そして、以下「一期一会」(100万円×50人)、「縁故会」(50万円×100人)、「支援会」(25万円×400人)。総計3億円を募る大計画である。

 貧乏人の私などにはとても出資は無理だが、この壮大な構想に、今後とも注目して行きたいと思っている。何せ、業界の大先輩とも言うべき白井透氏が精魂を傾けて取り組んでいる一大プロジェクトなのだから…。

 最後に余談になるが、講演会の後のカラオケ大会は“中止”された模様だった。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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