スマートフォン版へ

高松宮記念

  • 2008年03月31日(月) 12時50分
 今年の馬場コンディションから好時計の決着が予測されたが、3月末に移ってからの高松宮記念とすれば破格の1分07秒1(33.4−33.7秒)。5月に行われた96年フラワーパークの1分07秒4をも上回るレースレコードだった。

 先手を奪った馬だけが前半33.0秒を切るようなラップで飛ばしたのではなく、2F目から「11.0秒」以内のラップが4回も続き、最後の1Fも11.8秒。有力馬の脚色はみんな鈍ることなく、結果、上位5着までを5番人気以内の馬だけが独占するというきわめて珍しい決着だった。

 また、最近の古馬の重賞レースにして非常には珍しく、5着までに入った馬はまだまだ充実やパワーアップを期待してもいい4〜6歳馬。秋のスプリンターズSにもこのまま結びつきそうな結果でもあった。

 勝ったファイングレイン(父フジキセキ)は短距離に方向転換した5歳の今年、これで芝1200mを3戦3勝。通算[4-0-0-0]となった。前2戦は前半に置かれ、直線だけで伸びる形でともに1分09秒1。今回は鞍上の幸騎手が「置かれてはこの馬場ではとてもレースにならない。先行する一団にいるはずのキンシャサノキセキの後ろあたりで競馬をしようと思った」。スムーズにその通り6〜7番手で流れに乗り、持ち時計を2.0秒も短縮して1分07秒1。速い流れに自ら乗っていきながら、ゴール寸前もうひと伸びが利いたから素晴らしい。マイル路線には戻らない予定という。当然、秋のスプリンターズSの最有力馬だろう。

 キンシャサノキセキ(父フジキセキ)は、ほとんど勝ったと見えたゴール寸前、あと一歩のところで差されてしまったが、多少行きたがった程度でなだめることに成功。こちらも距離の1200mは合っている。今回はいつもと異なる直前の強い追い切り、変更した蹄鉄など大きな死角もあったが、折り合いさえ欠かなければGI級であることを改めて示した。関西に遠征するとどうしてもテンションが上がることが多いから、このあとは関東圏のビッグレースに完調で出走したい。

 連覇のかかっていたスズカフェニックスは残念。出負け気味につまずき、苦しい位置どりになってしまった。あの形になるとさすがに内を衝くことはできず外に回ることになったが、ゴール前のストライドはさすがだった。1400〜1600mのほうがむしろ適距離だけにすぐ巻き返せるだろう。

 ローレルゲレイロはいくらも負けていないが、1200mだと先手を主張するにはちょっと無理が生じる。ハナを切ってしのぎきった阪急杯、あるいは自身が主導権を握っていたに等しい東京新聞杯の好内容から、理想は1400〜1600mのほうだろう。

 一段と素晴らしい馬体になった5着スーパーホーネットとともに京王杯SC、安田記念と続く路線で真価を発揮したい。

 土曜深夜のドバイワールドCデイ。ウオッカは残念、勝ったかと思えるシーンもあったのだが……。あとワンパンチだった。ヴァーミリアンは勝負どころを迎える前にもう後退していたから、当日の体調? としか思えない。ひょっとするとここ一番とあってハードに追いすぎたのかもしれないが、こういう敗戦は遠征のレースではどんな世界の名馬にも起こりえるから仕方のないことだろう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング