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大阪杯

  • 2008年04月07日(月) 12時50分
 中山のダービー卿CTは、安田記念に続く路線とするとちょっと中身の乏しい凡戦。あまりのスローに途中からハナに立って逃げ切ったサイレントプライド、久しぶりのマイル戦でも高い能力を示したドラゴンウェルズ。この2頭はこのあとの展望も広がったが、馬体の良さが目を引いたオーシャンエイプスあたりを別にすると、ほかは春の展望は明るくない。人気のマルカシェンク、キングストレイルともに、馬体重の増減とは関係なくやけに小さく映った。敗因はレースの流れや、出遅れだけではないだろう。先行してくれれば…と狙ったシンボリグランは攻めのレースができなかった。この形では凡走も納得。またまた大波乱の特徴だけが浮き彫りになった平凡なレースだった。

 一方、「大阪杯」のダイワスカーレットはまた一段と素晴らしい牝馬になった。今回はドバイ遠征回避につながる目の外傷など、決して順調でもない休み明けだったが、プラス12kg、500kgに近づいた馬体は迫力にあふれている。腰のあたりだけが異常に強調されたサイボーグのような体型が、腹構えに厚みが加わり、いかにもダイワメジャーの妹を思わせる体のバランスになってきた。母のスカーレットブーケがそうだったように、もともと古馬になって体に厚みが増してから本物になる一族。今年は、昨年をさらに上回る活躍が約束されたといえる。並ばれた直線の中ほど、いっぱいになったかと見えたが、最後のラップは11.6−11.7秒。相手も頑張ったためで、ムチの入った最後はまた突き放している。連対記録はまだまだ続くことだろう。

 一旦はダイワスカーレットにハナを譲りながら、もう一度盛り返して見せたエイシンデピュティも立派なもので、すんなり流れに乗れた展開の利だけではない。昨春、エプソムCを制した当時よりたくましくなった。2000mをこなした自信も大きい。

 寸前に鈍ったアサクサキングスは、大きく成長していた。最後は心持ち重め残りだったこともあるだろう。ここまで良績のなかった2000mを1分58秒9で乗り切った内容はそのままストレートに総合力アップと考えたい。

 ドリームパスポートはインからもうひと伸びするかの勢い。最後は追い上げるのに脚を使ったため鈍ったが、ここ2戦よりはずっとレース内容はいい。今回のような流れでだれも止まらないと苦しいが、切れ味の生きる展開なら復活は遠くない。

 メイショウサムソンは、どうしたのだろう? 入念に乗って立て直しに成功したはずだったが……。ダイワスカーレットと同様、ドバイ遠征を断念し、そのぶん逆に乗り込み量は豊富になったが、悪いことに熱心な調教の疲れがちょうど出るころだったのだろうか。

 追い出してささり気味になり、最後はあきらめざるを得ないストライドになってしまった。陣営も首をかしげる敗因を探すのは難しいが、昨年、同じ59kgでこのレースを勝ったが、あのときは2分01秒4。上がりも平凡。今年は自身1分59秒2。まるで相手のレベルが違い、レース自体が異なっていたのではないか? 本当は決して初戦駆けするタイプでもないのではないか、とはいえる。使って良化することは確実だけに、天皇賞に向けての中間の動向に注目したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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