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皐月賞

  • 2008年04月21日(月) 13時00分
 抜きん出た能力を持つ馬はいない。同じような力を持つ馬が揃った今年は大接戦必至、白熱のレースが期待された。一週前の「桜花賞」がそういう決着だった。

 この「皐月賞」も同じように難しい結果が待っていたが、どうも物足りず、不完全燃焼のレースが展開されてしまった印象が強い。レースの決着には様々な要因がそれこそ複雑に絡み合うのは当然だが、ゴールの地点は最初から決まっている2000m。

 GI格の最も権威あるクラシックは、馬場状態や、積み重ねた歴史により勝ち時計まで予測されている。推測された通りだった。また、このレースの持つ意味や重要性は3冠の最初とはいいながら、実はケンタッキーダービーと同じような位置にあるとも考えられている。さらにいえば、クラシックレースの重要度とその本質は、人馬の織り成すレースの綾や、競走のもつ不思議を味わうレースではないところに価値がある。

 「もっとも早く、先頭でゴールした馬が勝ち馬である」。競走規定に定められたあまりにも当たり前のルールを失念して出走していたかのような人馬が多く、まだいくらでもエネルギーは残っていたのではないか、そんな印象を与えるゴール前の入着争いが繰り広げられたのは、ちょっと残念だった。袖ヶ浦特別とか九十九里特別ならいい。日本の競馬の頂点に立つクラシック「皐月賞」なのである。また、2000mの距離は現代の世界のビッグレースの根幹に近い距離なのだから、課されたテーマはそれこそただひとつ、どの馬より速く2000mを走破することに一義があるだろう。弾けたとか、思ったより弾けなかったとか、折り合ったとか、折り合わなかったとか、そういうことがテーマの条件戦ではない。今年なら、2分01秒5前後で自身が2000mを乗り切らなくては最初から勝ち負けと無縁。それがクラシック皐月賞の価値、かつ掟でもある。

 競走の本質は人間のトラック競技と通じる部分があり、作戦を用い、策を弄さなければならないのがレースだと考えてしまっては、そのレベルは低くなる一方である。

 勝ったキャプテントゥーレ(川田騎手)は、スタートした瞬間からもっとも意欲的だった。気迫の先行で最初から望外のマイペース。1000m通過は61.4秒。馬場状態を考慮するとスローというほどでもないが、2番手以下のマークはゆるく、後半1000mは60.3秒。自身で3コーナーからピッチを速め、最後は2馬身半の差でもほとんど独走に近い逃げ切りだった。マイナス18kgの数字には驚かされたが、細化したわけではなくシャープな体つき。距離不安もささやかれていたが、この単騎マイペースならその不安が生じるスタミナも結果として問われなかった。

 スキーパラダイスの牝系の中ではマイラー色をそう感じさせない体型から、ダービーでもそう評価は下がらない。なによりも皐月賞完勝の自信は大きい。

 タケミカヅチは馬場状態を考えると決して有利とはいえない最内枠。しかし、内側を嫌う馬が多かったこともあり、意外にスムーズに最短距離を追走することができた。一連のステップレースであと一歩、あとワンパンチの差に善戦止まりが続いたが、逆に崩れないのが大きな強み。距離不安のほとんどない牝系とあって、ダービーに向け大きな展望が広がった。

 マイネルチャールズはスタートでほんの少し出負け。隣のブラックシェルより前に出ることができたのは1コーナーを過ぎてからだった。このペースなら理想は弥生賞と同じような2〜3番手からの抜け出しだったろう。ずっと馬群にもまれる形になり、自分からスパートできる位置を取れなかった。少しも細くはない450kgの馬体は文句なし。今回がピークだったかもしれない、そういう心配は残るが、ダービーに向けてなんとか現在の状態をキープしたい。進展の余地はありそうに思える。

 ゴール寸前の脚いろがもっとも鋭く映ったのはレインボーペガサス。まだ、腰のあたりがさびしくダービーでは評価が分かれそうだが、距離はこなせるファミリー。

 伸びを欠いたブラックシェルは、見た目にも器用さの乏しい体型で、東京は合いそうだが、位置取り、コース取りなど大きな注文がつくのは今回と同じだろう。

 ショウナンアルバの前半控える作戦は陣営熟慮の結果と思えるが、同馬自身の次のレースを展望しにくくしたから、あとに響く大きな失敗だった気がする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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