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フローラS

  • 2008年04月28日(月) 13時00分
 ここで出走権を確保できるなら、本番のオークスでも期待できそうな馬がそろった注目のトライアル。人気に応えて鋭く抜け出したのはレッドアゲートだった。レースの前後半1000mずつが「61.1=59.4秒」のスローだったことを考慮すると、走破時計2分00秒5は速い。昨年ベッラレイアが2分00秒8。

 レースレコードの2分00秒3には及ばなかったが、コース改修後の最高時計になる。桜花賞が大波乱だったというだけでなく、レース内容にもちょっと物足りないところがあったから、レッドアゲートは本番でも最有力候補の1頭だろう。追い出してから記録に現れる数字以上に鋭く、かつ勝負強くなった。

 今回はこれまでの5戦と違って置かれることなく好位のレースができたこと。オークスに狙いを定めたローテーションで、きつい日程を避けたこと。地元の東京コースで勝てたことなど、強気になれる材料はいっぱいある。小柄な420kg台の馬体がほとんど変動しないのも内面の強さを表している。おそらくファミリーがタフな活力を伝えているのだろう。祖母はシーホーク産駒で、そのいとこにスズカコバン。3代母はリキエイカンの半妹になり、5代母トサモアーは56年のオークス・3着馬(1番人気)。だいぶ古い牝系だが、逆に簡単には崩れない底力を感じさせる。田村厩舎は桜花賞・3着のソーマジックとともに、候補を2頭も送ることになった。

 2着カレイジャスミンはここ2戦の凡走で評価が下がっていたが、これで連対4回はすべて左回り。行きたがる面があるだけに、東京、新潟など馬群がバラけてのびのび走れるコース向きなのだろう。たしかに今回は2000mの内枠、単騎スローに恵まれたのは事実だが、3代母は82年のオークス馬シャダイアイバー。父はダービー馬。人気の中心にはなったことのない伏兵だが、本番でも流れしだいでは…の可能性を残した。

 早め早めに進出し、一瞬あわやの伸びを見せた3着キュートエンブレムは、12日の阪神牝馬Sを逃げ切ったエイジアンウインズの半妹。派手なタイプではなく体もギリギリに見えたが、キャリアを考えると、この好走は立派。1勝馬ながら、たしかにこれまでの対戦相手のレベルは高かった。

 このスローの流れを、離れた最後方からただ1頭だけ33秒台の末脚で4着したメイショウベルーガ以下は、シングライクバード、カイゼリンなど、残念ながら獲得賞金からオークス出走は不可能になった。レース前にちょっとカッカしすぎていたカイゼリンは、2000m連勝から間もないローテーションがきつかったかもしれない。シングライクバードは外枠の不利も大きかったが、フリートークなどが代表するこのファミリー、やがて必ず成長するのだが、どうも3歳春のクラシックとは縁が薄い一族なのだろう。

 注目のユキチャンはうまく流れに乗って進めたが、吉田隼人騎手のコメント通り、上がりの速い切れ味勝負はつらかった。走破時計も上がりタイムも短縮しての敗戦だけに仕方がない。自己条件なら持ち味の生きるレースが訪れる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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