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NHKマイルC

  • 2008年05月12日(月) 12時50分
 心配された馬場状態は午後になって急速に回復。全体に時計のかかるコンディションではあっても、大幅な能力減に見舞われた馬、馬場を気にして力を出し切れない馬が出現するほどではなかった。

 勝ったディープスカイは期待された以上の素晴らしいスケールを爆発させた。あまりスタートは良くなく前半は後方追走の形になったが、四位騎手は同馬の能力に相当の自信があったのだろう。あわてることなくあまり芝の荒れていない部分を選びながら追走の余裕さえあった。それでも決して有利とはいえない内側を通りながら、この馬だけが上がり3ハロン33秒台。先に抜け出したブラックシェルを捕らえたあと、さらにストライドの幅を広げて伸びている。着差以上の圧勝だった。

 レース全体の流れは「46.7=47.5秒」。マイル戦とすれば前後半のバランスを失っていないから、各馬ともに能力は出し切れたペース。まして府中の1600m。少なくとも現時点でこの距離なら能力断然に近いのだろう。さまざまな成長過程を辿る馬がいるとはいえ、未勝利を脱出したのがなんと6戦目。「体質も弱く、残念ながら筋肉がつききっていなかった」のがその理由だが、ここ2戦の内容からするとこんな馬が未勝利で足踏みしていたとはとても信じられない。それほど圧倒的な勝ち方だった。

 別馬のように変わってきたこと、ゴール寸前もまだまだ余裕すら思わせたことから、ダービー出走の可能性が高くなった。ファミリーはケンタッキー・ダービーのウイニングカラーズやタップダンスシチーなどを送る一族。決してマイラー色が強いという配合でも体型でもない。ひょっとして……は十分にありえる。

 2着ブラックシェルは今回が初の1600m。ディープスカイとほとんど同じようなコースを通り、一度は完全に抜け出しかかった。大跳びであまり器用ではないタイプ。明らかに東京コース向きだった。こちらは予定通りダービーを展望することになるが、後藤騎手も「今回は勝ち馬に完敗」を認めざるをえなかった。ディープスカイとの力関係は、どちらが2400mをこなせる可能性が高いか、となる。ブラックシェルこそその本質はマイラー? という気がしないでもないが、推理の楽しみは増えた。

 ゴスホークケンは決して大きく崩れるような前半のペース「46.7−59.2秒」ではなかったことを考えると、意外なほど脆かった。自分の形にはまっていただけに厳しい結果だった。並ばれて抵抗できず簡単に根をあげてしまったあたり、体調の不安はまったくなかったから、気性面というより精神的に不振期なのかもしれない。

 ファリダットは追い込んで届かずという内容ではなかったろう。坂上からは明らかに脚いろは鈍っていた。武豊騎手だから目立たなかったが道中かなり行きたがっていた印象もある。やがては1600mもこなせるだろうし、素晴らしい馬体はひときわ目だっていたが、いまの時点では東京のマイルはきつかった。これからも試行することになるが、母の最大の長所を受け継いでいるとしたら、スプリンターとはいえないまでも距離延長はあまり歓迎ではないタイプだろう。

 1600mになって、また中間の動きの良さから巻き返しの期待されたサダムイダテンは、道中ブラックシェルと前後する位置。並んで伸びそうにみえたが、ほんの一瞬だけ。間をあけて立て直しを図ってきたが、ベストに近いと思えたマイル戦で、不安なしの体調での今回の凡走はつらい。立ち直りには時間がかかるかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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