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安田記念

  • 2008年06月09日(月) 12時50分
 ドバイ遠征の影響があって体つきが寂しく見えた前走とは異なり、馬体が戻ってプラス8kgで486kg。また、落ち着いていた。本馬場へ入ってファンのいる外ラチ沿いを歩かせる余裕さえあったことなど、心身の復活も大きかったが、今回のウオッカの圧勝はテン乗り岩田騎手の鮮やかな騎乗によるところ大だろう。

 最近の詰めの甘さを補うため。また、これまでのレースを振り返って「気分良く先行してもかまわない」と考えたのは最初のころからのビデオまで何回も観た岩田騎手で、レース直後の角居調教師の談話から推測するに、先行策は陣営の作戦変更でもなかった。

 二の脚がついての行きっぷりなど逃げたいコンゴウリキシオーを上回るほど。そこから少し下げたものの終始インの4〜5番手。流れに乗って気分良く折り合ったウオッカは直線もインを衝き圧倒的なストライドで抜け出した。しかし、ゴール前になって半ばあきらめギブアップしたような前走から、およそ同じ馬とは思えないような大変身は実は今回が初めではない。日本ダービー前の桜花賞がそうだった。あの時も止まっていた。

 ここが日本ダービー馬ウオッカの天才たるゆえんなのだろうが、ウオッカのGI格のレース3勝はことごとく1番人気ではないとき。これまでGI級のレースで1番人気に支持されたことは計4回あるが、一度も勝っていない。ひょっとして挑戦者の立場になってこそウオッカの舞台で、相手が強い方がいいのだろうか。こういう特質はこのあとも変わらないかもしれない。次にまた先行策を取り入れたからといって、それが成功するとはとても思えないのがウオッカの難しさだろう。

 注目の香港勢は大きく明暗を分けた。アルマダのホワイト騎手は香港のエースであると同時に東京コースを知っている。また、土曜日から何レースも騎乗機会があって今季の東京の芝まで分かっていた。逃げたコンゴウリキシオーのペースは昨年より1000m通過で0.4秒遅く、レースバランスは「46.2=46.5」秒。決して猛ペースではなかった。これをアルマダ(ホワイト騎手)は追走しながら、無理に接近することなくスパートを待っている。一方、グッドババは馬自身が珍しくイレ込み気味だったこともあるが、コース経験なしのドゥルーズ騎手は最初からグッドババのパターンを崩して早め早めの位置取りになり、スパートも早かった。チャンピオンズマイルの疲れもあったのだろうが、安田記念が東京の芝コース初めてでは、ドゥルーズ騎手もちょっとかわいそうで、最終レースの確勝級の馬での4コーナー先頭といい、陣営に準備万端とはいえない甘さがあったかもしれない。

 人気の中心スーパーホーネットは美浦滞在が成功し馬体減りもなかったが、心持ち出負けしたためちょっとあわてた。リズムを崩すように、馬群の真ん中に入ってしまった。スズカフェニックスはそう置かれることなく持ち味の切れを生かせる態勢には持ち込めたが、残念ながら東京のマイルGIでは迫力負けの印象が濃かった。ともに追い込みタイプ向きの流れではなかった点を差し引いても、同じマイルのGIなら京都のマイルCSの方が合うのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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