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【阪神JF】レシステンシアのスピード能力の前に3強は遠く及ばず

  • 2019年12月09日(月) 18時00分

今回2着馬以下につけた「5馬身以上もの差」の持つ意味は大きい


 人気の3強に続く支持を受けた4番人気レシステンシア(父ダイワメジャー)の、圧倒的なスピード能力爆発のレコード独走だった。

 1分32秒7(57秒5-35秒2)の2歳コースレコードは、前週の2歳1勝クラスの1400mでJRA2歳レコード(1分20秒3)と少差の1分20秒4のコースレコードが飛び出すほど時計の出やすい芝なので、驚くほど速いわけではないのに、2着マルターズディオサ(父キズナ)についた差は5馬身。人気の3強はそれ以上にちぎられてしまった。

重賞レース回顧

レシステンシアが圧倒的なスピード能力を武器に完勝(c)netkeiba.com


 ダイワメジャー産駒のGI勝利は(海外、JpnIを含む)、この日、香港マイルを制したアドマイヤマーズの計3勝、メジャーエンブレムの2勝など、全11勝が父と異なり1600m以下に限られる不思議はあるが、もう成長力うんぬんの死角は解消している。少なくとも桜花賞(17年レーヌミノル)、NHKマイルCまで適距離であり、今回2着馬以下につけた「5馬身以上もの差」の持つ意味は大きい。

 母マラコスタムブラダ(ARG)の父Lizard Island(リザードアイランド)は、デインヒルの孫。牝系はずっとアルゼンチン育ちだが、祖母の父Poliglote(ポリグロート)は Sadler's Wells(サドラーズウェルズ)直仔で、2000mの仏GI勝ち馬。背景にはヨーロッパ色が濃く、マイル以上の距離をこなせる可能性もかなりある。

 レシステンシアは、11月のファンタジーS1400mをレース史上2位の1分20秒7で快勝していた。そのレースのレコードが前記1分20秒3で、5馬身差独走の06年アストンマーチャンであり、アストンマーチャンは06年の改修直後の阪神JFを、勝ったウオッカとクビ差同タイムの1分33秒1(事実上レコードに相当する基準タイム)で2着している。

 したがって、今回4番人気にとどまったのは、人気上位馬にはそれ以上のスケール、総合スピードが秘められているのではないか、と期待されたのだが、そうではなかった。

 2着マルターズディオサは、1分34秒3(中身はそっくり同じ60秒5-33秒8)で1600mを2連勝していた。今回は果敢に先行し、自身の中身は(57秒6-35秒9)=1分33秒5。勝ったレシステンシアには離されたものの、前2走より「2秒9」も速い1000m通過で、自身のマイルの最高時計を大幅に短縮したから、展望は開けた。日本ダービー馬キズナの初年度産駒。半兄アルタイル(父カネヒキリ)は1800m級までこなしている。

 首の上げ下げで3着だったクラヴァシュドール(父ハーツクライ)は、好スタートからハイペースを察知した藤岡佑介騎手が中団に下げ、「58秒0-35秒5」のバランスで1分33秒5。東京の1600mを一旦はサリオスを交わすように1分32秒9=「59秒8-33秒1」で乗り切った牝馬とすると、自身の1000m通過が「1秒9」速かったとはいえ、絶好の展開と見えた位置から伸び切れなかったのは、ちょっとばかり不満。

 成長力が真価のハーツクライ産駒。ここ2戦、最後に伸び切れなかった内容から、もっとタメたほうが伸びるタイプなのか、それほどマイル適性は高くないのか、このあとのレースの運び方に課題が生じた。

 4着ウーマンズハート(父ハーツクライ)の1分33秒9の中身は「57秒7-36秒2」。上がり最速で差し切った新潟2歳Sは自身「62秒2-32秒8」=1分35秒0なので、内枠から強気に先行した今回は前半1000m通過がなんと「4秒5」も速いことになった。

 あまりに異なるバランスのレースになったので、今回は休み明けでもあり、仕方のない結果だろう。ただ、新潟組に毎年のように錯覚が生まれるのは、新潟1600mのレースはすっかり「直線600m」のレースに転じていることをつい軽視しがちのため。

 ウーマンズハートの新馬1600mは「64秒2-32秒0」=1分36秒2だった。新潟の外回りの4コーナーにさしかかるまで、みんなが助走にも近い超スローの64秒台。残るのはあと約600mの平坦の直線。直線1000m、外回り1600mでは、未勝利馬でも上がり32秒台は珍しくない。ただし、ウーマンズハートはこのあと確実に成長する。

 評価が一転して難しくなったのは、断然の1番人気で6着にとどまったリアアメリア(父ディープインパクト)。迫力あふれる気配は文句なしだった。直前調教を最後だけ「40秒0-11秒9」にとどめた細心の仕上げも(落ち着き十分だったから)、吉だったろう。ただ、馬体から受ける印象より、体質と気性が繊細なのは間違いない。

 前2戦でスローのレースしかしていない死角がストレートに出てしまったのがこの馬だったのか。アルテミスSの快勝は「61秒3-33秒0」=1分34秒3。今回の自身の中身は「58秒5-35秒7」=1分34秒2。前回とは前半に2秒8の差があるとはいえ、1000m通過58秒5ならふつうは少しも苦しくない。4コーナーまで手応えもそう悪くなかった。

 ところが、追い込んで届かずではなく、果敢にスパートして引き離したレシステンシアの上がり35秒2に対し、リアアメリアのそれは35秒7。直線は逆に差を広げられ、約10馬身差(1秒5)の完敗に終わったのは不可解。

 慣れないペース追走にリズムが崩れてしまった。キャリアの浅い2歳牝馬にはこういうこともある、と考えるしかないが、きつい流れを追走したため、後半3ハロンは前回より2秒7も要した。それでいながら、前回と同様の走破時計1分34秒台前半が気になる。ことマイルでは、意外やこのあたりが能力ではないのか、そんな大胆な心配を否定できない。

 母リアアントニアも、その父Rockport Harbor(ロックポートハーバー)もUSA産のダート巧者なので、その特徴が前面に出ているのか。あるいは緩いペースから後半スパートが理想で距離1600mが合わないのか…。陣営もレース直後は明確な敗因を探せないでいる。次走もマイル戦と思えるが、一変に期待できるだろうか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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