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【エプソムC】進路の選び方もきわめて難しいレースだったザダル

  • 2021年06月14日(月) 18時00分

キャリアの浅いザダルはこれから本物になる


 このあと夏から秋にかけて、しだいに各世代の占める競走馬の数と、勢力図が変化することになる。エプソムCはそれを象徴する6月の重賞として育ってきたが、上位を占めたのは今年も5歳と4歳馬。これで4歳「23勝」、5歳「13勝」、6歳「2勝」となった。

 快勝したザダル(父トーセンラー)は、初重賞を制して10戦【5-0-2-3】。再三の休養をはさみながらの出走なので、まだ4歳馬のような戦歴。これから本物になる。

重賞レース回顧

重賞初制覇を果たしたザダル(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 エプソムC(1800m)のレースレコードは、2001年のアドマイヤカイザーによる1分45秒1だが、馬場改修後の最高タイムは2015年のエイシンヒカリによる1分45秒4なので、ザダルの1分45秒1は事実上のレースレコードに相当の快時計だった。

 5歳ザダルにとっての初重賞制覇は、2015年から種牡馬入りしたトーセンラー(13歳、父ディープインパクト)にとり、ちょっと遅くなったが初年度産駒から送り出した初のJRA重賞勝ち馬だった。サイアーランキング1位を独走するディープインパクトの影響力はさらに輝いている。4日の英オークスをSnowfallスノーフォールが16馬身差で独走した映像が流れると、6日の安田記念はダノンキングリー、グランアレグリアが1着、2着。今週は函館スプリントSを孫世代のビアンフェ(父キズナ)が制し、エプソムCは同じく孫世代のザダルが好時計で勝ち、2–3着は直仔のサトノフラッグと、ファルコニア。連続した快走はみんな異なる距離だからすごい。

 レース全体のペースは「前半1000m通過58秒8-後半46秒3–34秒9」=1分45秒1。

 最初と、最終1ハロンを除いた中間の1400mは「1分20秒1」。どこにも緩みのない厳しい流れになり、先行勢で上位に粘ったのは1分45秒5(上がり35秒3)で5着のアトミックフォース(父ワークフォース)だけだった。

 また、直線に向くと各馬ともに馬場の内寄りを嫌ったが、外を回って追い込むことに成功したのは勝ったザダルだけ。上位に食い込んだほかの馬は、仕方なく馬場の真ん中より内に入らざるを得なかった馬ばかり。進路の選び方もきわめて難しいレースだった。

 ザダル(石橋脩騎手)の1分45秒1の快勝は、通ったコース、休み明けで少々重め残りのためか、パドックではカリカリして決して絶好調ともいえない状態を考慮すると、非常に価値のあるレースレコード(タイ記録)とすることができる。

 距離はおそらくこの1800m前後が最適と思える。ザダルの祖母は、成功した種牡馬Includeインクルード(父Broad Brush)の全姉。ようやく脚部がパンとしてきたので、秋には狙いのビッグレースに万全の状態で出走できるはずだ。

 評価落ちの6番人気にとどまった4歳サトノフラッグ(父ディープインパクト)は、入念な立て直しに成功。また、この距離も合っていた。直線は苦しい位置取りになり、最後は勝ち馬のムチが顔に入ったように見えたが、上がり最速の34秒3。こなせる距離の幅は広い馬だが、今回の好内容からは1800-2000mがベストと映った。

 3着ファルコニア(父ディープインパクト)は、3コーナー手前あたりから巧みにインを突いて進出し、そのままインから伸び最後までバテなかった。全兄の5歳トーセンカンビーナもそうだが、欧州タイプの牝系とあってタフな馬場コンディションを苦にしない強みをフルに生かした。格上がりの別定戦を小差3着した4歳馬。これからさらに良くなる。

 3冠「2、3、3」着のヴェロックス(父ジャスタウェイ)は、スランプに陥っていた印象があったが、今回の0秒3差の4着には復活の手応えがあった。直線はインを突いたファルコニアのさらに内を狙う形になったが、さすがに伸び切れる芝コンディションではなく、久しぶりにしぶといヴェロックスだった。古馬になってパワーアップしたジャスタウェイ産駒で、母方は日本でも多くの活躍馬を送るドイツの名門シュヴァルツゴルト系。底力を問われる秋のビッグレースに向け、再び展望は広がった。

 5着に粘ったアトミックフォースは、前述のように必死で粘って上位入線はこの馬だけ。

 着順はいつものちょっと詰めの甘い結果だが、今回の0秒4差はこれまでよりずっと中身は濃かった。これなら相手をみて強気にハナにも行ける。

 6着ヒュミドール(父オルフェーヴル)は、中団から一度最後方近くまで下がったので直線で伸びたともいえるが、吉田豊騎手が残念がったように「直線に向いて内に行かざるを得ないコース取りになってしまった」。

 混戦の中、1番人気に支持された4歳アルジャンナ(父ディープインパクト)は、レース前の落ち着きがなく妙にイライラしていたのが心配だった。そのためエンジンのかかりが遅いはずが、いつもより早めの進出になった印象がある。全弟の2歳コマンドラインが素晴らしいレースをしたばかりなので一段と評価が高まったが、今回はちょっと頼りない死角を見せてしまった。これで通算【1-3-1-3】。もっとパワフルに成長したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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