▲ドウデュースのオーナー松島正昭氏と武豊騎手(撮影:平松さとし)
念願のA.オブライエン調教師の馬で挑んだ翌年、武豊騎手は6回目となる日本ダービー制覇をドウデュースで掴みました。オーナーは前回の19、20、21年の挑戦を支援したキーファーズ代表・松島正昭氏。「武豊騎手で凱旋門賞を勝つ」ため、満を持してダービー馬ドウデュースで今年の凱旋門賞へ挑みます。
日本の悲願と特別な想いを背負い挑む凱旋門賞、今年で10回目となるその挑戦で武豊騎手は何を感じ、どんな言葉を残したのでしょうか。大雨の中行われた2022年の挑戦を振り返ります。
(構成=平松さとし)
ジンクスだけで勝てるほど甘くはない
10月の第1日曜日。フランス、パリ近郊にあるパリロンシャン競馬場に今年も武豊騎手の姿があった。
第101回を数える凱旋門賞(G1)、悲願の制覇を懸け、彼がこれに騎乗するのは10回目。今年のパートナーは日本ダービー(GI)勝ち馬のドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)だった。
レース4日前の9月28日。早朝のシャンティイに、日本のナンバー1ジョッキーはいた。この日、行われたドウデュースの世界最高峰レースへ向けた最終追い切り。「ほぼ仕上がって来ている」(友道調教師)との事で、武豊騎手は騎乗せず。相棒の動きを見守った。
「一度叩かれた事で確実に上向いて来た。そう思わせてくれる動きに見えました」
ドウデュースの前走は9月11日のニエル賞(G2)。本番の凱旋門賞と同じ舞台のパリロンシャン競馬場、芝2400メートルで、3歳限定のプレップレース(前哨戦)。6頭の相手にG1ホースはおらず、日本ダービー馬としては好勝負必至と予想出来た。
▲ニエル賞前の友道師、ドウデュース、武豊騎手(撮影:平松さとし)
しかし、結果は思わぬ形になった。
「良い感じで上がって来る脚を見せたけど、最後まで右手前が替わらずに伸びを欠いてしまいました」
後方から進むと、最終コーナーを回って直線へ向いた時はほぼ持ったままの手応えで先行勢を射程圏に捉えた。その時は「さすが日本のダービー馬、モノが違う!!」と感じさせたが、そこから思いのほか、伸びなかった。その結果、4着に敗れた。
少々落胆の表情を見せた武豊騎手だが、自らに言い聞かせるようにして、次のように言った。
「今回は休み明けで、完全に叩き台という状態でした。一度使った事で、手前の事とか、課題が見つかったのも良かったし、次は必ず変わって来るはずです」
先述した通りこの前哨戦が行われたのは9月11日。そのためにドウデュースがフランス入りしたのは9月2日。僅か9日前の事だった。その上に、現地ではそれほど強い追い切りはやらないままでレースを迎えた。レースの4日前には最終追い切りを行ったものの、その時も武豊騎手は乗せず、軽い追い切りで終わらせると、見守った天才ジョッキーはその理由を次のように語った