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誰にとっても身近な問題のコロナ

  • 2020年04月02日(木) 12時00分
 もはや、誰にとっても人ごとではなくなってきた。

 新型コロナウイルス感染拡大のため、東京では、先週末の外出を自粛するよう知事から要請がなされた。

 東京の繁華街に集まる人の多くはほかの地域に住んでいる人たちであるし、近隣の県との境界は、あってないようなものだ。結局、首都圏での外出自粛要請、という形になった。

 その要請がなされた翌日、JRA報道室から報道関係者に通知が届けられた。3月28日(土)以降の競馬場での取材に関するものだ。同日以降、検量室周りでの取材・撮影を、記者クラブのバッジ所有者などで、「検量室周辺特別取材許可証」を持った者に限定する、という内容だった。口取り撮影や表彰式、達成セレモニーなどを行わないということも、そこに記されていた。

 JRAの無観客競馬は、先週末が5週目だった。今回の取材規制は、観客を入れずに実施、ということから、さらに踏み込んだ感染防止策を示す格好になった。

 私は、今回の規制によって弾かれた人間のひとりであるが、事態がここまで深刻化すると、致し方ないと思う。検量室周り以外なら、引きつづき競馬場で取材をすることができるので、そうするよりほかない。

 タレントの志村けんさんが、3月29日、新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった。70歳だった。

 ショックだった。私は「8時だョ!全員集合」を夢中になって見た世代で、「東村山音頭(正式名称は『志村けんの全員集合 東村山音頭』」は、4丁目、3丁目、1丁目と、すべて完璧に歌って踊ることができるぐらい好きだった。

 志村さんは馬主としても知られ、所有した十数頭のうち、オサキニシツレイ、トノノオナリー、ハッピーハート、ケンノホシ、ケンノムスメ、ダイジョブダア、ミツノアジの7頭、つまり、半数ほどは、コビさんこと小桧山悟調教師が管理していた。

 志村さんは、今年1月にポリープの切除手術をし、もともと肺気腫があったという。

 その条件は、札幌にいる父と同じだ。しかも、父は今年84歳になる。

 私がウイルスを持って行って感染させたら、重症化する恐れがある。なので、来週木曜日の大学病院での受診付き添いは、札幌在住の叔父(父の弟)に頼むことにした。その飛行機を、さっきキャンセルしたところだ。

 特に中高年は、志村さんの訃報がこたえ、危機感をより大きくしたのではないかと思っていたが、そうとも言い切れないようだ。

 先日、食料品などの買い出しで外出したら、どう見ても70歳以上のたくさんの人たちが、平時と変わらず、外に出ていた。私と同年代や下の就労世代がほとんどいなかったのは、そこがオフィス街ではなかったからだろうが、若者や子供たちの姿が少なかっただけに、余計に目立っていた。

 メディアに出ている多くの専門家のなかで、私が特に信頼している東北大学の押谷仁教授は、次のように話していた。

「一部の人が上気道付近にたくさんのウイルスを持っていて、咳もくしゃみもせずに感染をひろげている」

 なるほど、と思った。そうでなければクラスターの説明がつかない。

 ウイルスはマスクの目より小さいが、ウイルスを含む飛沫はマスクで抑えることができる。だから、咳もくしゃみもしていない人がマスクをすることにも意味がある。ひとつ覚えのように「空気感染はしない」と言う専門家もいるが、それに近い感染の仕方をすると思って用心したほうがいいのではないか。一度にたくさんの人に感染させる「スーパー・スプレッダー」が誰なのかわからないから難しいのだが、自分がそうならないよう、できることを全部するしかない。

「netkeiba.com」編集部ではすでにテレワークを導入しているようだし、先刻、会報に寄稿しているクラブから届いたメールにも、4月1日からテレワーク勤務を実施すると記されていた。

 とにかく、騎手や厩舎関係者から感染者が出ず、競馬がこのままつづけられることを祈るしかない。

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作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊競馬ブック、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。netkeiba.com初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ダービーパラドックス』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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