▲コントレイル前田オーナーもまた「一緒にダービーを勝ちたい」と (C)netkeiba.com
シャフリヤールで今年のダービーを制した福永祐一騎手。2018年のワグネリアン、昨年のコントレイルでの勝利に続き、自身にとって3つ目のダービータイトルです。
福永騎手の偉業を祝して「祐言実行」が限定復活! 一昨日の友道厩舎、矢作厩舎、藤原厩舎からの祝福コメントを受けて、昨日から福永騎手ご本人が登場。2日間にわたって特別インタビューをお届けします。
(取材・構成=不破由妃子)
※このインタビューは電話取材で行いました
コントレイル前田オーナーの言葉が力に
──昨年、コントレイルで三冠を達成した矢作厩舎とは、先生のお話にもあるように、2015年のクラシック戦線をともに歩んだリアルスティールという存在がありました。
福永 リアルスティールのときも調教から参加させてもらって、担当の柿崎助手といろいろ試行錯誤しながらやっていくなかで、こちらの意向を汲んでもらえることが多かったように思います。コントレイルに関しても、金羅助手と自分に任せてもらっているので、彼と密にコミュニケーションを取りながら、いい信頼関係を築くことができています。
もともと矢作先生は、そうやってスタッフやジョッキーに任せてくれる方。だからこそ、みんな責任感を持って取り組むし、その過程で信頼関係も生まれますよね。
──コントレイルについては、ノースヒルズの前田幸治代表との絆もありますよね。
福永 そうですね。昔からずっと「一緒にダービーを勝ちたいな」と言ってくださっていました。コントレイルがライアン(ムーア騎手)で東京スポーツ杯2歳Sを勝ったときも、レース後すぐに、「次からはお前やからな。手放すなよ」と連絡をいただいて。その言葉が、すごく力になりましたね。
──矢作先生いわく、ワグネリアンでダービーに挑んだ際、「“ダービーを勝ったら、ジョッキーを辞めてもいい”くらいの話をしていた」と。覚えていますか?
福永 言ったのかなぁ(笑)。まぁでも、それくらい自分に欠けていた大きなピースだったのは間違いないですし、きっと周りの人からもそう見えていたんだろうなと思います。
矢作先生が、「(コントレイルでダービーに挑んだときは)リアルスティールのときにはなかった信頼感が生まれていた」とお話してくださっていますが、やはりそれは、自分に「ダービーを勝った」という実績が加わっていたことが大きいはずですしね。
藤原厩舎と次に見たい夢は――
──思えば、「フェニックス男」に「オークス男」という称号が加わり、今や「ダービー男」ですからね。4年で3勝は離れ業ですよ。
福永 わからないもんですよねぇ(笑)。人生って不思議だなと思います。
▲「人生って不思議だな」と福永騎手 (C)netkeiba.com
──信頼関係のもと、ダービーという大舞台を三度も制したわけですが、福永さんから見て、ともに頂点をつかんだ3人の調教師に共通する点はありますか?
福永 矢作先生と友道先生は、スタッフやジョッキーに任せてくれるスタンスですが、藤原先生は自分で作っていくスタンス。当然、自分の関与の仕方も三者三様ではありますが、「一緒に作り上げてきた」という点では共通しています。
あと、「責任は俺が取る」という覚悟は、どの先生からも感じますね。藤原先生だけは、「好きにせい」とは言わないけど(笑)。
──そこは先ほどおっしゃっていたスタンスの違いですね。
福永 もうひとつ共通点といえば、「負け面」がいいこと。負けたときにグチグチ言われたことは一度もないです。そこは本当に共通点。
──それこそ、「責任は俺が取る」という覚悟の現れのような。
福永 だからこそ、自分もちゃんと説明しますし、競馬は思い通りに運ばないことのほうが多いということもちゃんと理解してくださっているので。自分も決してごまかしたりしないし、上手く乗れなかったときは、正直にそう言えます。
──なるほど。そこが噛み合ってこそ生まれるのが、本当の信頼感なのかもしれませんね。さて、冗談とはいえ、矢作先生からはこんな言葉も飛び出しました。「もういいだろ。次は調教師としてダービー馬を育てろよ」。これに対するアンサーは?
福永 藤原先生と矢作先生には、ワグネリアンでダービーを勝ったときも「もうええやろ。調教師になれ」って言われたんですよね(笑)。でも、そこから三冠馬に出会い、こうして3回目のダービーも勝っているわけで…。
あのとき辞めていたら、すべてなかったわけですからね。そう思うと、あのタイミングで辞めなくて本当によかった。この先のことは……そうですね、その時々で自分が思うこと、自分の心の声に従っていきたいなと思っています。
──今、福永さんの心からは、どんな声が聞こえてますか?
福永 今は、シャフリヤールで海外のG1に行きたいと思ってます。やっぱり藤原厩舎とは、海外のG1を一緒に勝ちたいという思いが強いです。シャフリヤールにはそれだけの能力があると思いますし、先生の視野には、すでに来年のドバイあたりが入っているんじゃないですかね。まぁ、そのときに自分が乗っているかどうかわかりませんが。
──いやいや、乗っているでしょう。
福永 それはわかりませんよ。プロフェッショナルな厩舎ですし、自分も情でどうこうという思いはないですから。自分がその舞台にふさわしいジョッキーであれば依頼をもらえるだろうし、そうじゃなければ依頼はこない。そのジャッジに関しては、一切妥協しないのが藤原先生ですからね。
自分も一切、甘えるつもりはありません。騎手という仕事を精一杯楽しみつつも、そこで迷わず依頼がもらえるような騎手でありたい。進化を止めないためにも、まだまだ未知の分野にチャレンジして、新しい自分を発見していきたいと思っているところです。
▲藤原調教師と、藤原厩舎と、次に見たい夢がある―― (C)netkeiba.com
(文中敬称略、了)