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凱旋門賞に騎乗した武豊騎手も後押し エントシャイデンと挑んだ仏G1・フォレ賞

  • 2021年10月11日(月) 18時02分
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▲応援してくれた団野騎手(左)と西村騎手 (提供:坂井瑠星騎手)


凱旋門賞に挑んだディープボンドの僚馬として、フランスに帯同していたエントシャイデンと坂井瑠星騎手。先日無事に帰国し、坂井騎手は現在は隔離期間中。もう間もなく、日本の競馬に復帰予定です。

ということで、1カ月半にわたってお届けしてきたコラムも、今回が最終回です。凱旋門賞の当日に、フォレ賞(仏G1)に挑戦したエントシャイデンと坂井騎手。直線で「勝てる!」と思ったほど、白熱のレースで沸かせてくれました。最後のコラムはレース回顧で締めくくります。

凱旋門賞は、パドックから不思議な空気が漂っていて…


 netkeibaをご覧のみなさん、こんにちは。坂井瑠星です。

 今回テーマとするのは、エントシャイデンと挑んだフォレ賞や凱旋門賞のこと、そして今回のフランス遠征についてです。

 コンビを組んだエントシャイデンには毎日調教で騎乗していましたし、僕自身もパリロンシャン競馬場で騎乗するのは2回目だったので、ほどよい緊張感で当日を迎えることができました。

 いつも通りエージェントと車で競馬場に向かい、1レースの少し前に到着。さっそく1レースから仲良しのオイシン(・マーフィー騎手)がG1を勝ち、2レースではフランキー(・デットーリ騎手)、3レースではミカエル(・バルザローナ騎手)が勝ちました。

 そのほかにも、ペリエ騎手、スミヨン騎手、ビュイック騎手、クリスチャン・デムーロ騎手など、日本でもお馴染みの騎手たちがたくさんいて、彼らと一緒に騎乗できることを改めて誇らしく思いました。

 ちなみにジョッキールームの僕のロッカーは、ミカエル(・バルザローナ騎手)やギュイヨン騎手、レネ・ピーヒュレク騎手の近くでした。

 そんななか、ついに迎えた凱旋門賞。

 応援したのは、もちろん2頭の日本馬(ディープボンドとクロノジェネシス)と(武)豊さんが騎乗したブルームです。

 凱旋門賞を観戦したのは初めてでしたが、パドックから何か不思議な空気が漂っていて、やはり特別なレースであることを再認識。凱旋門賞というレースの重みを感じました。

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▲凱旋門賞に出場するジョッキーたちが集合 (提供:坂井瑠星騎手)


 レースは3頭ともに最後の直線まではいい雰囲気に見えましたが、当日まで降り続けた雨の影響か、最後は伸び切れず…。勝ったのは、僕のロッカーの隣の席だったピーヒュレク騎手が騎乗したTorquator Tassoでした。

 レース後のジョッキールームではとても興奮した様子で、「夢のようだ、信じられない」という言葉を繰り返していたピーヒュレク騎手。それだけ凱旋門賞は特別なレースで、そんな彼を見ながら、「いつか乗ってみたい。勝ったらどういう感覚なんだろう…」と、その“いつか”を想像したりしていました。

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▲ピーヒュレク騎手が騎乗したTorquator Tassoが勝利 (提供:坂井瑠星騎手)


武豊騎手からもアドバイスをいただき、いざ自身のレースへ


 興奮冷めやらぬなか、レースは進んでいき、いよいよフォレ賞です。

 いつも通り、鞍の準備をしてから検量をし、装鞍をしてからパドックへ。フランスでは、この日までに10鞍のレースに騎乗していたこともあり、おかげで変に緊張することもなく、レースを迎えることができました。

 このときに改めて思ったのは、今まで乗せてくださった方々に感謝しなければいけないなということ。同時に、その方々のためにもいいレースをしようという覚悟ができました。

 レース前には、豊さんから「馬場の内はボコボコで悪いし、絶対に外のほうが伸びるよ」というアドバイスもいただきました。

 パドックでは舌縛りが外れるアクシデントはありましたが、冷静に対処し、その後はスムーズに馬場入りまでたどり着くことができました。返し馬では、入念に馬場状態を確認。ロンシャンの馬場は、日本の馬場と違って水捌けがよくないので、雨がそのまま芝に残っていて、まるで田んぼのなかを走っているような感覚でした。

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▲パドックにて。レース前には武豊騎手からアドバイスも (提供:坂井瑠星騎手)


 今回、オーナーである前田会長からの指示は、「好きに乗ってこい! 頑張れよ!」というもので、矢作先生も、相手関係や展開についてしっかりと話し合った上で「あとは任せる。思い切って乗ってこい!」と送り出してくださいました。

 パリロンシャンの1400mでは不利な外枠(大外の16番)からいい結果を出すため、いろいろなパターンを考え、あとは出てから決めようと腹を括ってゲートイン。前走よりいいスタートを切ったエントシャイデンからは「俺は前に行きたいんだ!」という気持ちが伝わってきたので、無理に逆らわず、好位の3番手というポジションにつけました。

 レース前の豊さんのアドバイスの通り、馬場の内はボコボコで悪く見えました。しかし、僕が通ったコースはまだ綺麗なほうだったので、エントシャイデンも苦にする様子はなく、いい手応えのまま最後の直線に向かいました。

 今回は、前回(パン賞5着)手応えがなくなった残り500mあたりでもまだハミを取り、しっかりと走れていました。残り400mでゴーサインを出すと、素晴らしい反応で2馬身抜け出し、「このまま行けば勝てる!」という勢いでしたが、ラスト100mあたりで勝ち馬に並ぶ間もなく抜かされ、2着馬にも交わされて3着という結果に終わりました。

 前走よりメンバーが強くなっていたこともあって13番人気という評価でしたが、状態は抜群によかったですし、能力を出し切って素晴らしい走りをしてくれました。ただ、「よく頑張ってくれた!」という思いと同じくらい、やはり「あそこまでいったら勝ちたかった」という悔しさも…。

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▲3着という結果に「あそこまでいったら勝ちたかった」 (提供:坂井瑠星騎手)


 おそらく、今回勝ち切れなかったところが今の僕に足りない部分。いつかまた同じような場面になったときに、勝たせられるような騎手にならなければなりません。そのためには、今後も努力あるのみです。

 今回のフランス遠征では、本当に多くのことを学べました。コロナ禍という大変な時期に行かせていただき、貴重な経験をさせてくださった前田会長をはじめ、矢作先生、サポートしてくださった皆様、そして今回の遠征に関わったすべての方と、なにより頑張ってくれたエントシャイデンに感謝したいです。

 今回のフランス遠征のコラムは、これで終わりになります。短い間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。

 日本を空けたこの8週間で得たものを、来週からの騎乗でアピールしていきます。今後とも応援よろしくお願いします!

(文中敬称略)

1997年5月31日、東京都生まれ。父・坂井英光は大井競馬所属の調教師、叔父も元騎手の坂井薫人という競馬一家。同期には荻野極、木幡巧也、藤田菜七子ら。2016年に栗東・矢作芳人厩舎でデビュー。2019年、ノーワンでフィリーズレビューを勝利し重賞初制覇。2020年には、ダノンファラオでジャパンダートダービーに勝利し交流GI初制覇を飾った。日本だけの騎乗でなくオーストラリア、ドバイなど多くの海外遠征にも挑戦している。

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