馬の毛色が子供たちに伝わる遺伝子の法則によれば、栗毛は劣性遺伝のため、栗毛の両親の場合は子供は栗毛しか生まれないことがわかっています。つまり、栗毛の仔が誕生するためには、親馬は栗毛の要素を含んだ遺伝子を持っている、ということになります。逆に言えば、
ディープインパクト産駒には栗毛の仔がいないとされていますが、これは
ディープインパクトに栗毛の要素を含んだ遺伝子がない可能性が高いからでしょう。
マイルCSで人気を背負うであろう
エアスピネルは栗毛ですね。母の
エアメサイアは鹿毛で、産駒のうち2頭が栗毛なんです。
「
エアワンピース(2008年生まれ、父・
ロックオブジブラルタル)と
エアスピネルが栗毛で、この2頭は4勝しています。ほかの子供たちは別の毛色なんですけど、栗毛のほうが結果が出ていますね」と笹田師。
確かに、調べてみると鹿毛の
エアカページは22戦3勝。黒鹿毛の
エアマスカットは1戦0勝、
エアウィンザーは7戦2勝(2017年11月17日現在)です。
エアメサイアは2014年に亡くなっており、
エアウィンザーが最後の産駒でした。サンプル数が少ないので統計学的に“
エアメサイアの仔は栗毛が走る”とは言い切れませんが、
エアメサイアに限らず産駒の毛色と成績を結びつけて考えるのは面白いですね。POGなどで参考にする要素にするのも一手だと思います。
エアスピネルを管理する笹田師は以前は伊藤雄二厩舎の調教助手でした。つまり、
エアスピネルの母である
エアメサイアのこともよく知っている方です。この親子、毛色は違えど、他では似ている部分はありますか?と伺ったところ、
「それが全然似てないんですよ。
シルエットも仕草もふだんの性格も」と笹田師、苦笑いしていました。
「強いて言えば、全能力を発揮するときと『これでいいや』と競馬をやめてしまうところが似てますね」
なるほど。掲示板を外さないように成績が大崩れしていないので一見わかりにくいのですが、勝てそうで勝ち切れなかった精神的な甘さは親譲りなのでしょう。
そういった特徴を踏まえて、笹田師は「初コンビになるムーア騎手には、性格など注意する点を伝える」としています。豊さんとのコンビも好きですが、刺激的な鞍上を迎えることで、
エアスピネルの新たな一面が見られるかも、という期待も抱いてしまいます。
「ここにきてレースで集中力が出てきて気性面が成長してます。状態も前走より一段階、二段階上のレベルです。これまでにない
エアスピネルをお見せしたいですね」
自信を持って送り出す陣営の様子からも
エアスピネルの状態の良さがヒシヒシと窺えますよ。
(取材・写真:花岡貴子)