ニシノラッシュは2歳夏、福島でデビュー戦勝ち。以降、
新潟2歳ステークスと
京王杯2歳ステークスでともに3着、オープンの
クロッカスステークスを優勝。特に
クロッカスステークスでは直線で行き場をなくす不利を克服する力強い内容でした。しかし、右前脚を痛めて長期休養を余儀なくされ…。その後、長期休養を経て宮本厩舎へ転厩する運びとなりました。
ニシノラッシュが関東から栗東・宮本厩舎にやってきたときのことは今でも鮮明に覚えています。入厩後、すぐに見に行ったのですが、当時は脚元に見た目にもすぐわかるほど“爆弾”を抱えたままでした。正直なところ、復活はおろか、再びレースに出走できるのかさえわからない状態でした。
「爆弾はいつ再発するかわからない。かといって中途半端な仕上げだと逆に脚元に負担がかかります。慎重にじっくりと乗り込みを重ねていきました」(宮本師)
プール調教を織り交ぜながら、坂路中心で乗り込まれる毎日。少しは脚元がスッキリするかな? と思いきや、大幅な改善は見られないまま。未だ小康状態、見た目は決して良くなってはいませんし、古傷をサポートする右前脚のバンテージは手放せません。それでも脚元以外はいつも元気いっぱいな様子で毎日を過ごしています。
人間でも年をとれば、身体のどこかに不安箇所はあるものですが、それとは付き合っていくしかないですよね。ラッシュもそんなかんじで、古傷をケアされながらうまく付き合っていくしかないかんじです。
そんなかんじで転厩後は1000万下から再スタートしただけに、ひとつずつクラスを上げながら、ついに再び重賞戦線で戦えるまでになったのは感慨深いものがあります。
宮本師も、はにかむように「重賞戦線に戻ってきましたね」と嬉しそうな笑顔をみせていました。
前走の
石清水ステークスでは、時計のかかる馬場や先行されると思われた馬のスタートが悪かったなど、「勝つ条件がすべて揃いました」(宮本師)。そして、それに応えるようにラッシュもよく頑張りました。
「最近はスタートの行きっぷりも良くなりました。2,3歳時は左回りで実績がありましたが、いまは右前脚に古傷がある影響もあってか右回りのほうが安定した成績を残しています。阪神の坂は楽ではありませんが、開幕週の内回りは歓迎です」
初重賞制覇に期待をかけつつ、今回もとにかく無事に戻ってきて欲しい。そんな気持ちで見守るレースになりそうです。
(取材・文:花岡貴子)