ツイてない時は、よろしくない出来事が立て続けに起こる...。誰にもそんな経験があるとは思うが、こういった“負の連鎖”は人に限ったことではなく、サラブレッドの身にも起こりうる。
桜花賞に出走する
アマルフィコーストは、まさにその典型かもしれない。
発端は昨年12月の2歳女王決定戦・阪神JFに向けた1週前追い切りだった。新たなパートナーになるはずだったクリスチャン・デムーロが、丸馬場でテンションが上がり、暴れる
アマルフィコーストに乗るのを嫌がってしまい、騎乗をキャンセル。
そのためG1出走そのものが取りやめとなり、メンタル面を
リセットするために放牧へ。この流れ自体がかなり珍しいケースだが、アク
シデントはこれだけでは終わらなかった。
仕切り直しとなるはずだった先月の
フィリーズレビューでは、スタート直後に隣の
モルトアレグロがヨレてきて、前脚を引っ掛けられ…落馬、競走中止である。
「最近はレース結果うんぬん以前に、(レースで無事に)走ること自体から遠のいてしまってますね」と苦笑いするのは担当の中川厩務員。まさに踏んだり蹴ったりの状況で、この分だと、まだまだ不運は続く?
確かにその読みもアリだが、「明けない夜はない」という言葉もある。実際、1週前追い切り(28日=ウッド6ハロン84・1-11・8秒)では競走中止明けとは思えないくらいの抜群な動きを披露してみせた。
「前にこの馬にずっと乗っていたアンちゃん(騎手候補生のこと)が“他の馬とはモノが違う”と言っていてさ。内心ホンマかいな、と思ってたんだけど、初めてトラックで追い切りに乗って、アンちゃんが言っていたことがよく分かったよ。追い出すと、グンと体が沈み込んで…こんな動きをする馬はなかなかいない。少なくとも、この厩舎では初めて」とは騎乗した宇田助手の弁だ。
牧田厩舎の
桜花賞といえば、個人的に強く印象に残っているのは2015年の
アンドリエッテ(
桜花賞6着、
オークス5着、
秋華賞4着)。その乗り味はパートナーの川田が絶賛するほどだったが、宇田助手いわく「
アンドリエッテより、こっちの方が動きはいい」のだとか。
競走中止明けだけに、間違いなく嫌われるだろうが、無敗の女王
ラッキーライラックとの勝負付けが済んでしまった感のある
チューリップ賞組を買うよりは、イチかバチかでフィリーズR組、しかもゴールすらできなかった馬に賭けてみる手もありか。
これまで半端ではない不運が続いたからこそ、“反転”した時は、強烈なメンバー相手でも一発がありうる? 最近ツイてないことばかりが起こる坂路野郎は、自分を励ます意味でも、
アマルフィコーストの逆襲をひそかに期待している。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ