1997年に創設され、今年で22回目を迎える浦和伝統の交流重賞
さきたま杯。創設当初はGIIIだったが、2011年にGIIへ昇格した。第1回の勝ち馬は
フジノマッケンオー、第2回
テセウスフリーゼと、小回り千四らしい結果(先行型有利)だったものの、2007年に
メイショウバトラーが勝ったあたりから素軽さ、器用さよりも、むしろパワーを含めた総合的な能力が求められるようになった。
その象徴が2009〜10年に連覇した
スマートファルコンで、当時のダート最強馬がここを目標に定め、現実に圧勝したことは、浦和千四がイメージ以上にタフな舞台であることを示している。
他の交流重賞同様、
JRA勢が優勢で、過去10年を遡ると
JRA勢が8勝、2着7回と圧倒。ただ
ナイキマドリード、
ソルテなど一矢報いたケースも散見され、その年々のレベルと質を見極める必要がありそうだ。他の交流重賞と比べ、地方勢にも脈はある。
脚質的に先行有利で、好走(連対)はほぼ逃げ、先行、好位差しに限定される。3〜4コーナー、6番手以降からの逆転は、2013年
テスタマッタ(
フェブラリーS覇者)だけで、勝ち馬、連対馬は5〜7歳が中心。高齢馬の好走歴は2008年
リミットレスビッド(1着)を境に途絶えている。昨年は
ホワイトフーガが優勝するなど、牝馬も好走歴はあるが、今年は有力馬が出走しない。
今回参戦する騎手では
武豊騎手の4勝、戸崎騎手の2勝が目立つ。枠順の出目は(8枠連複)、1枠=1、2枠=2、3枠=1、4枠=1、5枠=8、6枠=1、7枠=3、8枠=3。過去10年で「5-8」が3度出ていることは特筆しておく。
以上を踏まえて、ここからは有力馬を紹介していこう。
まずは
グレイスフルリープ。前走の
東京スプリント(大井)で交流重賞3勝目。無理のない逃げで、終いにはまだ余力があった。以前に同じ舞台で凡走(
オーバルスプリント7着)しているが、コース適性以前に展開不利が大きかった。再び
ピークを迎えており、相性のいい
武豊騎手が手綱を執るのは心強い。
サクセスエナジーは前走、
かきつばた記念を2番手から横綱相撲。良馬場の1400mで1分25秒9も胸が張れる時計だ。デビューから一貫ダート、マークした5勝中3つが1400m戦。自在型の新星で、このメンバーでは最も勢いを感じる。
前走の
東京スプリントで3着だった
ネロは、先手がとれなかった展開を鑑みれば評価できる内容。芝、ダート、多様にこなしてきた地力とセンスがあり、1400mの距離も2歳時にオープン特別2着がある。浦和向きであることは容易にイメージでき、今回、
森泰斗騎手の落馬負傷により代打で騎乗することになった
矢野貴之騎手の手腕に期待したいところ。
ベストウォーリアは本レースで過去2年2、3着。いずれも前々をスムーズにさばき1分26秒台だから悪くない。遡れば
南部杯連覇、
フェブラリーS2着した実力馬。前走の
かしわ記念5着からも大きな衰えもなさそうで、もうひと花咲かせることも十分可能。
円熟期の8歳を迎えた
キタサンミカヅキは前走の
東京スプリントで、最後のひと伸びで2着を確保。競り合いにきわめて強い切れと闘志は変わらず、昨年暮れ
ゴールドカップで小差の3着を見る限り、浦和千四への対応力にもメドがついている。
JRAでダート6勝(千二〜千四)、
南部杯5着の実績を持つ
ナガラオリオンは今春、移籍した金沢でも2勝をマーク。9歳ながらスピード能力は健在で、いずれも持ったままで後続をチギった。今回も好勝負可能な条件で、名手・吉原騎手の手綱でどこまで。
(取材・文=「日刊競馬」記者・吉川彰彦)