3歳牝馬によるレースでも、意外と軸は固く収まっているのが、この
関東オークス。昨年まで過去10年の結果を見ると、そのうち9回で勝ち馬は1番人気か2番人気。唯一例外だった2012年でも3→2番人気で決まっていた。ところが今年は1、2番人気とも馬券圏内を外す波乱の決着となった。
要因としていくつか考えられるが、ひとつは、近年久しくなかった中央の1勝馬でも出走できたこと。つまり中央馬のレベルが例年ほどではなかった。そして川崎2100m戦としてはめずらしくハイペースで縦長の展開になったことなど。
川崎2100m戦では1周目のスタンド前でがっくりペースが落ちて、ともすれば行きたがる馬の我慢比べになるようなこともめずらしくない。ところが今回、前3頭、続いて2頭、さらにうしろと、ポツリポツリと馬群が離れてかなりの縦長になった。2100m戦ゆえ半端なラップタイムになるが、前半1100m通過69秒ちょうどというのは、近年のこのレースとの比較でも3秒ほど速い。前後半のタイムで比べてみても、前半推定1000mが62秒3、後半1000mが68秒6と、前半が6秒以上も速い極端に前掛かりのペースだった。
先行3頭はあきらかなオーバーペース。やや離れた4番手の2頭でも速いくらいだったかもしれない。
クレイジーアクセルが逃げるのは予想されたとおりで、直後にからんでいったのが
メイショウヒサカタと
ララプリムヴェール。
メイショウヒサカタは前走
兵庫チャンピオンシップでも直線を迎える前に失速しており、やはり適性は短いところにある。3番人気に支持された地方期待の
クレイジーアクセルにとっては、その馬に直後で突かれたのではたまらない。
メイショウヒサカタは8着に、
ララプリムヴェールは6着に沈んだという状況で、4コーナーまで先頭をキープし、直線半ばまで抵抗して3着に踏ん張った
クレイジーアクセルは、相当強いレースをしたといえそうだ。
直線を向いて先頭に立ったのは、前3頭からは離れた4番手を追走していた地元川崎の
ゴールドパテックで、ゴール前でこれをとらえて勝ったのが、中団6番手を追走していた
ハービンマオだった。
勝った
ハービンマオは、中央4頭ではもっとも人気薄で、単勝21.1倍の6番人気。芝で3戦して勝てず、ダートの未勝利戦を勝ったものの、続く前走ダートの500万条件が9着だった。その前走が今回と同じ2100m戦であれば、今回の人気も仕方ない。管理する
中舘英二調教師ですら、この勝利には驚いていたほどだった。先行勢ハイペースを読んでじっくり構えて仕掛けたということもあるだろうし、人気薄ゆえ気楽に乗れたこともあっただろう。何よりデビュー以来1800m以上を使われているように父
ハービンジャーで長距離に適性があり、母
父ゴールドアリュールに、母の
ダンシングマオがダートの準オープンでも好走した実績があった
2着は
ゴールドパテックで、今年の南関東牝馬三冠で皆勤出走はこの馬だけだった。
東京プリンセス賞では7馬身+7馬身差で2秒9差の3着。それまでのレースでも
グラヴィオーラ、
プロミストリープには歯が立たなかったが、距離が伸びて長く脚を使う展開になって能力を発揮した。同じ川崎ダート2100mの
ロジータ記念では注目となりそうだ。
そしてグランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズンの最終戦でもあったこのレース。ここまでのポイント上位馬では、2位の
エグジビッツ(北海道)、3位の
アクアレジーナ(大井)、4位の
マイメン(佐賀)が出走してきた。いずれもここを勝とうというより、少しでも上の着順でGDJのタイトルを狙おうという馬たち。結果は、3頭とも着外の2ポイントのみしか加算できず。スローペースになって馬群が一団で進めばまぎれもあったかもしれないが、ハイペースとなってスタミナが問われる底力勝負では厳しいレースになった。
結果、ここまで
東京プリンセス賞で3着の3ポイントしか持っていなかった
ゴールドパテックが、最終戦の
エクストラポイントの加算もあって大逆転優勝。ちなみに初めて
エクストラポイントが設定された昨年の3歳シーズンも、最終戦までに4ポイントしかなかった
ステップオブダンス(大井)が、
関東オークスで地方最先着の3着に入って大逆転で優勝していた(2位の
タッチスプリントとは同ポイント)。
たしかに中央との交流重賞で、地方馬最先着の2着や3着に入れば、地方馬としてはそれだけで女王と呼ばれるにふさわしい活躍なのだが、昨年の
ステップオブダンスも、今年の
ゴールドパテックも、GDJ3歳シーズン対象レースでは他地区への遠征がなく、おそらくはGDJのタイトルは意識していなかったと思われる。南関東牝馬三冠路線を狙っていたら、たまたまGDJのタイトルも付いてきたという感じではある。それも2年連続となると、遠征を重ねてGDJのタイトルを狙っていた南関東以外の関係者にとっては、トンビに油揚げをさらわれた感は否めない。