後に“伝説の新馬戦”と呼ばれるレースは毎年のように出てくる。最近はそのボーダーが下がりつつある気がしないでもないが、そう呼ばれるからには、やはり中身の濃いレースが多いことだけは確かだ。
では関東圏で行われたここまでの新馬戦で“伝説の――”という形容が最もふさわしいレースは?
ディープインパクト産駒グランアレグリア(牝・藤沢和)が制した6月3日の東京芝1600メートル新馬戦で異論はなかろう。
勝ち時計1分33秒6は新馬戦史上最速。2着以下は2馬身+3馬身1/2+9馬身…後続が切れ切れにゴールする壮観な光景が展開された。
世代のトップバッターを務めた
グランアレグリアの圧倒的なパフォーマンスで存在感を十分に見せつけた名門・藤沢和厩舎。今世代の来春のクラシックでの活躍が楽しみでならないが、一方でこの厩舎らしからぬ異色のキャラが存在する。
クラヴィスオレア(牡・父
レッドスパーダ、
母クラリン)は、産地馬体検査を経て
JRAで4月25日に馬名登録を済ませたものの、2日後には登録を抹消。その後は道営の
小野望厩舎に移籍し、門別での
JRA認定フレッシュチャレンジ(6月20日=ダ1000メートル)を勝って、再び中央入りする。
もちろん、天下の藤沢和厩舎にも、いわゆる「(地)馬」はそれなりに在籍してはいたが、2歳のこの時期では極めてまれ。果たしてその狙いは?
「当初は良くなるのに時間がかかりそうだったんだけど、向こう(道営)に行ってからが意外と良くてね。ひとつ勝ったことの意味はやはり大きい。中央に戻しても、いろいろと可能性が出てくるわけだから」
こう説明してくれた指揮官だが、一方で目先の結果にはこだわらない方針を明かした。
「現時点でウチのほかの馬と同じレベルにあるかとなると…。ゲートなんかはまだのんびりしているし、全体的に幼さが残っている。まあ、じっくりと乗り込んでやっていきますよ」
2回札幌開催の
クローバー賞(8月19日=芝1500メートル)で“デビュー”予定。果たして既存のルートに一石を投じる走りを見せてくれるのか…それはちょっと先の話なので、最後に今週の話を――。
「今(の早い時期に)デビューさせるのは勝ち負けになる馬だけ。そうじゃなければ、秋の東京を目標にする。勝てる馬はどんどん使っていかないと、新馬がたまって(出走レースが)重なるのが嫌だからね」
という藤沢和調教師の戦略のもと、日曜(15日)の函館芝1800メートルに鞍上ルメールでスタンバイしているのが
ロマンティコ(牡・
父エンパイアメーカー、
母ウェーブクイーン)。
グランアレグリアらとともに最も早い段階で入厩したグループの一頭で、美浦坂路での初時計は実に4月15日。約3か月にわたってみっちりと乗り込まれてきた。
「まだ子供だけど、能力的には十分やれる」と評価は当然ながら高い。
グランアレグリア同様、この
ロマンティコもまた“デビューするからには勝ち負け”という藤沢和流に見合った走りを見せてくれることだろう。
(立川敬太)
東京スポーツ