今週から開催場所を札幌、新潟、小倉の3場に移し、いよいよ本格的な夏競馬に突入するが、列島を覆う猛暑の話題で持ちきりの今年は、より実感しやすいのではないか? 何をかって2歳馬の質も、必然的に暑さを避けられる札幌が最上位になりやすいことだ。実際、昨年の札幌開幕週の新馬戦3鞍の勝ち馬は、初日の芝1500メートルが
タワーオブロンドン、2日目の芝1800メートルが
レイエンダ、ダ1700メートルが
ハヤブサマカオーと、そうそうたる顔ぶれ。好素質馬が集結しやすいのは間違いない。
今年も例年に劣らない素材が満を持してデビューの日を待っている。まずは最もクラシック戦線に直結しそうな日曜(29日)芝1800メートル。前出
レイエンダの1年前には
ソウルスターリングが制した舞台でもあり、藤沢和厩舎の牙城とも呼べる鞍。今年はその
ソウルスターリングの半妹にあたる
シェーングランツ(
父ディープインパクト、
母スタセリタ)が早々と目標に掲げ、順調な調整を重ねてきたとなれば、当欄の主役も当然ながら…とはいかないことをご了承いただきたい。
より注目したいのは
レッドエンヴィー(牡=父
ジャスタウェイ、
母スタイルリスティック)。父を手がけた須貝調教師の管理馬であること、兄姉に
レッドアンシェルら活躍馬が多くいる血統背景など、推し材料には事欠かないが、
ソウルスターリングの主戦でもあったルメールが、この馬に騎乗する“流れ”をやはり重視せねばなるまい。
実際、馬を見ても、首差しの柔らかい走りは父
ジャスタウェイをほうふつさせるのに十分なスケールがある。函館入りした当初、調教を担当する北村助手は「似ているのは顔くらい」と、けむに巻いていたが、日に日にトーンが上がり、ルメールが騎乗した先週の追い切り後は「追うごとに良くなってきたね。少しズブい面があるのは
ジャスタウェイと違うが、追って切れるところは同じ。能力が高いのは間違いないよ」と十分な手応えを得て19日に札幌に送り出した。
「ウチの厩舎の馬は新馬を勝って、2戦目でもしっかり勝ち負けする馬が将来伸びる。新馬戦で仕上がり過ぎてお釣りがなくなってしまってはダメなんです。
ゴールドシップも、
ジャスタウェイもそう。この馬もクラシックに乗せないと」
厩舎の歴代看板馬になぞらえた期待度を有する逸材はどんな走りを見せるのか、大いに注目だ。
せっかくなので新馬3鞍すべての注目馬を挙げておきたい。同日ダ1700メートルは、こちらもルメールでデビュー予定の
リープリングスター(牡=
父ゴールドアリュール、
母オールザウェイベイビー・木村)。半兄に07年の2歳王者
ゴスホークケンがいる血統馬だ。「大きい馬で少し
モコモコした感じはあるけど、乗り味が良くて、スピードに乗るといいフットワークをする。素質は十分ですよ」と太田助手。
前日土曜(28日)の芝1500メートルは、やはり話題を集めている
アルママ(牡=父
オルフェーヴル、
母ホエールキャプチャ・畠山)。マイネル軍団の総帥・岡田繁幸氏がホレ込む16年セレクトセール(当歳=1億7000万円で落札)出身の金の卵は、函館での追い切りに欠かさず駆けつけた柴田大が「全身を使うような感じでグーンと行く。今までに乗ったことのないような走り」と絶賛しているのだから、ただ者ではないはずだ。
果たして今週末の“札幌三番勝負”で笑うのは⁉ 将来を約束されている馬たちの戦いをじっくりとチェックしたい。
(立川敬太)
東京スポーツ