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内田博が追い求める「自分にしかできない仕事」/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2018年07月27日(金) 18時00分
 ひと口に笑顔といっても様々な種類がある。苦笑い、照れ笑い、愛想笑い…。笑いの上に修飾語がつくと笑顔の純度が薄まる気がするが、26日に48歳の誕生日を迎えたベテラン騎手・内田博幸のそれは混じり気が一切ない純度100%である。

 そこに彼がいるだけで周囲はパッと明るくなる。ジメジメした梅雨時はカラッとした笑顔で湿気を忘れさせ、猛暑の中でも照りつける太陽より輝く笑顔で灼熱地獄を吹き飛ばしてくれる。レースの合間はバレットと談笑、トレセンでも馬上から休憩所まで「元気」を絶やすことはない。

「黙っていたら幸運も来ないでしょ。運も実力のうちだからね。そもそも、しゃべらないと逆に疲れちゃう。それに過去を引きずったり、悩んだり…ってつまらないじゃん。誰だって失敗するんだから。一度だけの人生、明るく生きた方がいい。みんな、どんどん死に近づいていってるんだもん。ホントにそうだよ。生きてるうちに楽しまないとね」

 取材対象者から学ぶことは多いが、心が沈んだときは内田博を取材することにしている。彼は不思議なパワーをくれ、取材後は自分も前向きになれるのだ。そんな内田博の代名詞といえば“剛腕”。幼少期から体操で鍛え上げた二の腕を調教後に測らせてもらうとナント35センチ! とても48歳とは思えない。

 その腕っぷしでこれまで数々の馬を勝利に導いてきた。特筆すべきは他のジョッキーが嫌がるような気性の荒い馬、ズブくて反応の悪い馬などを“剛腕”で御し、能力を引き出してきたことだ。今年のフェブラリーSノンコノユメを完全復活させた際に「最後は根性!」と言ったセリフは特に印象的だった。

 クセが強い馬に乗ること数知れず――。その中でも忘れられない一頭がいる。「アレに乗ったら怖いものはない」と言う伝説の“暴れ馬”ゴールドシップだ。

「言うことを聞かないってレベルじゃない。特に3、4歳のころは半端なかったから、もう命懸けで乗っていたね。俺が死ぬか、お前が死ぬか…くらいの戦い。“やるならやってみろ!”って感じで馬に向き合った。自由にさせていたら、いくらでも悪さをする。やっぱり人が服従させないとね。乗った後はとにかく疲れた…。ノンコノユメも気が強いけど、ゴールドシップに比べたらおとなしいもんだよ」

 JRA通算1152勝、今年も46勝と衰え知らずだが、最もうれしい瞬間は「自分にしかできない仕事」ができたときだという。

「“内田が乗って馬が変わった”とか、“この馬がこんなに走ったのは初めて”とか…言われたいよね」

 アイビスSDではクラウンアイリスに騎乗。陣営は「年を取って少しズブくなりましたが、内田さんならガシッと動かしてくれるでしょう。すべてお任せしています!」(沢助手)と全幅の信頼を置く。剛腕で勝利をたぐり寄せ、陣営に「馬が変わった!」と言わせることができれば最高の結末だろう。

(童顔のオッサン野郎・江川佳孝)

東京スポーツ

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