いつか出る、いつか出ると思わせながら、簡単には出現しない。それが短距離界の主役なのかもしれない。近年では
ロードカナロア、古くは
タイキシャトル。路線に華を生むのは、勝つべくして勝つ絶対王者の存在。明瞭な対決図式があってこそ、勝負の光と影、その
コントラストが見る側に伝わるのだが…。
その意味では今年の
キーンランドCは、大いに注目したい一番だ。ス
プリント路線に新たに参入してきた
キャンベルジュニア、
ムーンクエイクの古馬勢に加えて、飛躍の余地を残す
ダノンスマッシュ、
トゥラヴェスーラら3歳勢。こんな異種格闘技的な組み合わせこそ、混沌とした勢力図を一気に塗り替える可能性があるからだ。
さて、取材を重ねるにつれて宴会野郎の気持ちを引く一頭が実は
トゥラヴェスーラである。中距離からス
プリント路線に切り替えて2・1・2着。まだ目立つ戦績は残していないが「来年はGIを走っている馬」と主戦・
福永祐一の評価が半端なく高いのである。その背景を
新谷功一助手が次のように伝える。
「前走の
葵S(2着)では“動いてほしい時に反応が悪くて動けなかった”とジョッキーは不満そうだった。そのあたりは期待の裏返しでもあるのでしょう。札幌に来たのは日曜(19日)でも、2か月前からジョッキーとの相談でプランを練ってじっくり栗東で調整してきた。今回の結果を今後の物差しにしようとするつもりでね」
後方からの競馬を強いられている現状を見れば、トモの緩さや腰の甘さに課題はあるのだろう。それでも前走から3か月、鞍上はパートナーに確かな成長を感じているようだ。
「前走は稽古でもパッとしなかったが、今回のほうが状態はいい。力試しだね。ここでやれるなら秋はGIに行っていいし、ダメなら一から積み上げていけばいい。当日に雨が降ってもいい経験になるし、そのあたりも含めて見極めたい一戦。素材はGIで走れる馬ですから」(福永)
既成勢力を打ち破る新星の出現を、個人的には大いに望みたいサマーシリーズ終盤である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ