今週末から東京、京都に開催場所を替えての3日間競馬。とりわけ「秋の東京開催」は暮れの2歳GIに向けた重賞など番組面の充実だけでなく、新馬戦の出走馬の質もグンと上がる節目のタイミングとされているが、そもそもこうした流れを作ったのは藤沢和調教師の戦略によるところが大きかったのではないか。藤沢和キュウ舎の素質馬は秋の東京デビューが定番。それに乗じて競馬サークル全体に、“秋の東京デビュー”がひとつの
ステータスとして捉えられる風潮が出来上がったように思う。
もっとも、2012年に新馬戦の開始時期が早まると、藤沢和師の戦略も早期デビューにシフト
チェンジする傾向が年々強くなっていった。一昨年の7月に札幌(芝1800メートル)でデビューし、阪神JF、
オークスを制した
ソウルスターリングが最たる成功例で、さらに前倒しとなる6月の東京デビューからの大成例はまだない。それをついに打ち破ろうとしているのがGIIIサウジアラビア
ロイヤルC(6日=東京芝1600メートル)に出走予定の
グランアレグリアである。
6月3日、3回東京開催2日目の芝1600メートル新馬戦で驚異の1分33秒6レコードV。次走の未勝利戦を楽勝した2着馬に2馬身差、3着馬はそこから3馬身半差、4着馬に至ってはさらに9馬身差…後続が切れ切れになる始末。あれから4か月が経過したが、少なくとも記者は当時の衝撃を超える新馬戦にお目にかかっていない。
率直な思いを藤沢和師にぶつけてみると、「(他の馬との比較は)他陣営のことだし、競馬場や馬場も違うから」と前置きしたうえで、「少なくとも東京デビューの中では一番かな。こちらが想像していた以上の内容で勝ってくれたのは確かだね。デビュー前に2か月くらいキュウ舎で乗り込んだといっても、追い切りは馬なり調整だけ。あの時期に、あれだけの競馬ができたのが大したもの。今は早い時期から競馬に使えることも大事な能力のひとつだからね」と。
かなり先走った話ではあるが、22年2月いっぱいで定年を迎える藤沢和師にとって、クラシックに挑戦できるのは残り3世代。いよいよ集大成の時期を迎えるタイミングで出現した
グランアレグリアの走りが、今後の競馬サークルにおける2歳馬戦略の流れを決定付けるような気がしてならない。
この
グランアレグリアとの対決を避けてか、思いのほか登録馬が少なくなりそうな
サウジアラビアRCだが、藤沢和キュウ舎の馬が数多く利用するミホ分場で勤務経験があることで、藤沢和師とは師弟関係と言えなくもない黒岩調教師が管理する
ドゴールを最大のラ
イバルとして紹介しておこう。
6週続いた夏の新潟開催最終週、しかも重馬場(芝内1400メートル)の中で力強く差し切ったその内容は“高速キャラ”の
グランアレグリアとは対照的ながら、魅力にあふれる勝ちっぷりだった。
対
グランアレグリアについて「(初戦の)時計通りなら、文句なしに強いですよね。でも対戦経験のない馬同士ですし、楽しみにはしているんです」と控えめながらも、前向きに話す黒岩師は「控える競馬でいい脚を使えたことは想定とは違いましたけどね。気持ちが強い馬なので、他の馬に比べても、しっかりとトレーニングを積めて、それだけ中身ができていたんでしょう。前走後も在キュウで反動がないかを見ながら、緩めずに、いい調整ができています」と順調さと体調の良さでチャレンジする。
果たして
グランアレグリアが順当にクラシックへの王道を突き進むのか、それとも新たなスター候補が出現するのか。2歳戦もいよいよボルテージが上がってきた。
(立川敬太)
東京スポーツ