今年、史上5頭目の牝馬三冠を目指す
アーモンドアイ(牝3、美浦・
国枝栄厩舎)。勝利すれば、管理する国枝調教師にとって2頭目の牝馬三冠となるが、最初にこの快挙を達成したのは2010年のことだった。「平成」に牝馬三冠を達成した3頭の挑戦を振り返る。今回は
アパパネ。
■着差以上の強さを見せつけ、同世代GIを完全制覇
前年の阪神ジュ
ベナイルFで2歳女王となった
アパパネは、
桜花賞と
オークスを制し牝馬三冠に王手をかけた。
オークス後は放牧には出ず、厩舎での調整が続けられた。この年は、当時観測史上1位という記録的猛暑だったが、美浦でひと夏を過ごした馬体はボリュームアップに成功している。
秋の始動戦には
ローズSが選ばれた。そして、阪神ジュ
ベナイルFと
桜花賞に続き栗東に滞在した。
マイネルキッツ、
ピンクカメオらが行ってきた国枝流、いわゆる「栗東留学」である。
ローズSの10日前に栗東へ移動した
アパパネは、坂路で調整されレースに送り出された。当然、1番人気に推されたが結果は4着だった。好位につけるも道中は折り合いを欠き、ゴール前で一旦先頭に立ったが伸びあぐね、初めて馬券圏内を外してしまう。
それでも
秋華賞へ向けての評価は落ちなかった。
ローズSは後方有利なレースだったこと。プラス24キロは、本番を見据えた余裕のある仕上げと見られ、
アパパネが叩き良化型であることもプラスに捉えられた。国枝師も、4コーナーを回り苦しいところから抜け出そうという闘志が見られた点を、
トライアルとして十分に納得できる内容とした。
アパパネはそのまま栗東で調整され、体も締まり上昇気配を見せた。
断然の1番人気に支持された
秋華賞。1000m通過を58.5秒で
アグネスワルツが引っ張る流れは、3コーナー過ぎから後続が差を詰めにかかり、4コーナーではほぼ一団となって直線を向く。前走よりも落ち着いた様子で中団の外を進んでいた
アパパネも馬なりで位置を上げ、直線は大外からスパート。力強い末脚で、内を粘る
アプリコットフィズや最内を伸びてきた
レディアルバローザを交わし、
アニメイトバイオと
ワイルドラズベリーの追撃も抑え先頭でゴールした。直後に蛯名騎手の左手が挙がった。
ローズSで
アパパネに土をつけ、ここでも3/4馬身差の2着に迫った
アニメイトバイオの後藤浩輝騎手は「勝った馬は強い。来たら来ただけ伸びていくような感じでした」とコメントし、「すがすがしい負け」と着差以上に
アパパネの強さを感じさせた。前哨戦は落としても本番できっちり勝つ。女王の貫録を見せつけた
アパパネは、この世代の牝馬GIを完全制覇した。