今年、史上5頭目の牝馬三冠を達成した
アーモンドアイが
ジャパンカップで四冠を狙う。今週の「名馬列伝」は『
ジャパンカップ名牝列伝』と題して、牝馬の
ジャパンカップ優勝馬を取り上げる。今回は1989年のホーリックスをお送りする。
■ニュージーランドの牝馬が、並みいる実績馬を破る
オセアニア勢の
ジャパンカップ成績は、1982年に初参戦して以来、9頭が出走し3着が最高着順だった。そんなオセアニア勢の雪辱を果たしたのが、ホーリックスである。
1989年の出走馬は豪華な顔ぶれで、レース前から例年以上に盛り上がっていた。
日本馬を代表するのは、平成3強とも称された
オグリキャップ、
スーパークリーク、
イナリワンで、
スーパークリークが1番人気、
オグリキャップが2番人気に支持された。それに続くのが海外勢で、3番人気が芝12Fの世界レコードを持つ
ホークスター、4番人気が前走4連勝でドイツのGIを制したイギリスの
イブンベイ。さらに、前走イ
タリアのGIを勝った
アサティス、前年(88年)の
ジャパンカップ覇者
ペイザバトラー、
凱旋門賞を勝ったばかりの
キャロルハウスが続いた。このなかで、ホーリックスは9番人気だった。
レースは、
ホークスターの逃げ予想に反して、
イブンベイがハナを主張した。
ホークスターは控えて2番手、ホーリックスが3番手、そこからやや離れた内に
オグリキャップ、外を
スーパークリークが進む。
イブンベイが飛ばし1000m通過は58.5秒、その後もハイペースのラップが刻まれていく。直線を向き、一杯になった
イブンベイと
ホークスターに替わり、内からホーリックスが先頭に立ち抜け出す。そこへ外から南井克巳騎手(現調教師)の剛腕に導かれた
オグリキャップが猛追するが、オ
サリバン騎手の風車ムチに応えたホーリックスも簡単には抜かせない。ほぼ並んでのゴールは、クビ差でホーリックスが制した。この激戦を目の当たりにした東京競馬場のファンは、2頭の芦毛馬に惜しみない拍手喝采を贈った。
牝馬による
ジャパンカップ制覇は第3回のスタネーラ以来3頭目。勝ちタイムの2:22.2は、日本レコードを一気に2.7秒更新する世界レコードだった。
鞍上のオ
サリバン騎手はレース後に「この1戦にオセアニアの威信を懸けていた。これで負けるようなら、オセアニアの馬のレベルが下であることを我々は嫌でも認めるしかなかった。だからいま、最高の感激に浸っている。こんな感激は初めて」と喜びを語った。
また、ホーリックスを管理するP.オ
サリバン調教師は、「この馬で負けるようなら、もう2度とここには来ない」とレース前にコメントし、そのための準備も怠らなかった。海外勢で最初に来日し、南半球とは真逆である日本の気候に慣れさせようと、じっくりと曳き運動を行い、日光のもとで放牧させるなど心身の調整に努めていた。
こうしてプライドを賭けたチーム・ホーリックスの戦いは、最高の結果で幕を閉じたのである。