今年の
ジャパンカップで
アーモンドアイが目指すのは、史上5頭目の牝馬制覇であり、史上2頭目の3歳牝馬による制覇である。『
ジャパンカップ名牝列伝』、今回は史上初の3歳牝馬制覇、そして翌年には史上初の連覇を達成した2012・2013年の
ジェンティルドンナをお送りする。
■史上初のJC連覇を達成した“貴婦人”
2012年、史上4頭目の三冠牝馬に輝いた
ジェンティルドンナは、4冠を目指す舞台として
エリザベス女王杯ではなく、
ジャパンカップを選んだ。この年の日本馬の代表格は、
凱旋門賞制覇をわずかに逃しての帰国初戦となった
オルフェーヴル。それに続くのが、クイーンエリザベスII世C覇者で国内GI初勝利を狙う
ルーラーシップ、
ジェンティルドンナは3番人気だった。
外枠(8枠15番)からスタートした
ジェンティルドンナは、積極的に前へ。鞍上の
岩田康誠騎手が「昨日今日の馬場を見て、内にこだわった」とレース後話したように、3番手の内で折り合いをつけた。
ビートブラックが引っ張る流れは、1000m通過が60.2秒。道中は中団後方に構えた
オルフェーヴルは、4コーナーから外目を捲り気味に上がり、直線入口2番手で末脚爆発の準備を整えた。
直線を向き、2番手以降はほぼ一団でスパートを開始したが、
ジェンティルドンナと
オルフェーヴルが伸び、残り200mで逃げる
ビートブラックを交わす。そこから2頭による三冠馬同士の激しい叩き合いがゴールまで続き、最後は
ジェンティルドンナがハナ差先着して、3歳牝馬で初めて
ジャパンカップのタイトルを手にした。
直線の
オルフェーヴルとの接触で審議対象となったが、岩田騎手は「
オルフェーヴルに勝ち、3歳牝馬が
ジャパンカップを勝ったということ。
ジェンティルドンナをほめてあげてください」と、馬をフォローした。
2013年はドバイ遠征(
ドバイシーマクラシック2着)し、帰国後は
宝塚記念3着、
天皇賞・秋2着と勝ち星をあげられず、
ジャパンカップに向かった。しかし、
ゴールドシップ(2番人気)や
エイシンフラッシュ(3番人気)をおさえ、1番人気に推された。
レースは
エイシンフラッシュが押し出されるようにハナに立ち、
ジェンティルドンナは3番手集団の中で折り合いをつけた。一方、
ゴールドシップは最後方を進む。この年の1000m通過は62.4秒というスローペースのなか、
ゴールドシップが3コーナーから徐々に外を回りポジションを上げる。
直線で逃げ切りを図る
エイシンフラッシュの内を突いたのは、
ジェンティルドンナ。仕掛けられると反応よく抜け出し、直線半ばで先頭に立った。残り100mで3歳牝馬
デニムアンドルビーが外を急追するも何とか凌ぎ、史上初の
ジャパンカップ連覇を果たした。
前年と同じハナ差の勝利も、前年と比べれば調子はいまひとつだった。それでも追い切りに乗り、何度も過去のレースを見て臨んだという初コンビのR.ムーア騎手は「今日は彼女の力を信じて騎乗した。予想よりも前での競馬だったが、最後までよくがんばってくれた。
ジャパンカップ連覇に貢献できて嬉しい」と喜びを語った。
2014年の
ジャパンカップは4着で3連覇はならなかったものの、引退レースとなった次走の
有馬記念は、4番人気で勝利して有終の美を飾った。
GI・7勝、獲得賞金額歴代2位、2度の
年度代表馬など、引退時には数々の記録を残した。また、馬名の「貴婦人」らしからぬ勝負根性を見せて、牡馬を倒しファンを魅了することも多かった。
ジェンティルドンナは、記録にも記憶にも残る名牝なのである。