中央勢は4頭と限られた出走枠。直前の
JBCクラシックでは結果が出なかったものの、JpnI勝ちのある古馬3頭に対して、重賞連勝中で世代レベルが高いと言われている3歳のグリムが単勝1.4倍と断然の支持を受けた。しかしその中央勢ではもっとも人気のなかった
オールブラッシュがグリムを4馬身突き放す圧勝。中団からレースを進めた
オールブラッシュが3コーナーから一気にまくるという展開も意外なものだった。
浦和・
小久保智厩舎の2頭がレースを引っ張って、そのうしろに中央4頭が続く展開。中央勢にこれといった逃げ馬がおらず、ゆったり流れるかと思ったらそうはならず、前半1000m通過が62秒2で、ペースはそれほど緩むことがなかった。後半も63秒2とラップがあまり落ちることはなく、
オールブラッシュの勝ちタイムは2分5秒4。良馬場にもかかわらず過去10年の
浦和記念との比較では、2008年に
スマートファルコンが逃げ切ったときの2分4秒8(重)に次ぐ2番目のタイム。昨年、一昨年あたりと比較すると、この浦和開催は全体的に1秒程度速かったが、それにしても2分5秒4はかなり優秀なタイムだ。
前半が62秒台で流れ、2着グリム、3着
クリソライトの上り3Fがともに38秒1というのは、例年の
浦和記念であれば勝っていてもおかしくないパフォーマンス。緩みのないペースにもかかわらず、前後半でちょうど1秒しか変わらない流れを乗り切った
オールブラッシュのレースぶりを評価すべきだろう。
オールブラッシュは、調教師も鞍上も「逃げるつもりだった」ということだから、まさに瓢箪から駒という展開での勝利。スタートでタイミングが合わず中団を追走。2周目の3コーナー手前で先行した地元2頭の行き脚が鈍ったところでグリムが先頭に立ったわけだが、そこで並ぶ間もなくまくって行ったのが
オールブラッシュ。その上り3Fは36秒9。勝負どころで動いたグリムにしてみれば、意表を突くようなペースでうしろから来られてしまい、そこでもう一度エンジンをふかすようなことはなかなかに難しい。それが4馬身という決定的な差になった。
ただ今回はグリムの評価を落とすべきではなく、出遅れても落ち着いて後半の一瞬に勝負をかけた田辺騎手と、それにこたえた
オールブラッシュのパフォーマンスを褒めるべきだろう。
オールブラッシュは昨年の
川崎記念を逃げ切ったあとしばらく結果が出ず、フロックだったかと思われても仕方ない成績だった。しかし今年、
かしわ記念であわやという
ゴールドドリームの2着があり、そして今回の勝利。あらためて能力の高さを示した。とはいえその間、中山の
マーチS、先の
JBCクラシックでは二桁着順に敗れていて、厳しい流れにならない地方の舞台でこそと言えそう。
東京大賞典はパスして、次は
川崎記念となるようだ。
グリムに1馬身差と食い下がった
クリソライトは、前走
JBCクラシック(15着)が14カ月ぶりの復帰戦で、今回は復調を感じさせるレース内容。来年は9歳だが、得意の船橋で
ダイオライト記念4度目の制覇にも期待が持てそう。
アポロケンタッキーが最大限の能力を発揮したときの強さは認めるところだが、たとえば今年の
帝王賞がそうだったように、砂をかぶるのを嫌がるのかどうか、レース前半からまったく走る気を見せないこともある。この馬はどういう条件ならハマるのか、狙いどころが難しい。