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アーモンドアイ一色”に染まったJCウイークの美浦トレセン。この3冠牝馬の一挙手一投足に注目が集まったのはもちろん、管理する国枝調教師の周囲は常に人だかり。本来なら他の出走馬、ましてや次週以降の出走予定馬の話を聞ける雰囲気ではないのだが…。
そこは記者が初めてトレセンに足を踏み入れた二十数年前から「困った時は国枝調教師」が格言化(ネタに苦労した際、国枝師なら常に丁寧にコメントしてくれるため)していた“神トレーナー”。なんだかんだで聞きたいことを聞くことができた。
5回中山初日(12月1日)の500万下・
葉牡丹賞(芝内2000メートル)に、国枝厩舎から
サトノラディウス、
ボスジラの2頭が出走予定。前者はサ
トミホースカンパニー、後者は金子真人HDと、ともに日本を代表する個人馬主だけに“2頭出しもやむなし”となったのか、それとも是が非でも
葉牡丹賞にこだわる理由がほかにあるのか、その真意を知りたかったのだ。
「この仕事をしていると次から次へといろいろなことがあるけど、(
アーモンドアイのような)素晴らしい馬が(厩舎に)いるのは本当にありがたいこと。(将来は)どこまで行くんだろうな」と国枝調教師。JC直前でもピリピリしたムードは一切なく、いつも通りの穏やかな対応だったのには恐れ入る。
話を戻してまずは
サトノラディウス。東京芝2000メートルのデビュー戦は前半1000メートル通過が68秒1の超々スローになったためとはいえ、勝ち時計は2分08秒3と桁違いに遅い。しかも良馬場でだ。さすがに評価しづらいところだが、「しまいの脚(上がり33秒4)はなかなかだったし、まだまだこれからの馬。いかにも2回目で大きく変わってきそうなタイプだよな」というのがトレーナーの見立て。
一方の
ボスジラは福島(芝2000メートル)でデビュー勝ち後、オープンの
芙蓉S、500万下の
百日草特別で連続2着。
サトノラディウスとは対照的に経験値が武器になりそうだが、「この馬だってまだこれからって感じ。(現4歳の全兄)
ポポカテペトルが
菊花賞(3着)のころに台頭してきたように、上はおくてのタイプもいるだろ。本当は前走を勝って
ホープフルSに行きたかったんだが、この後は来年に備える予定なんだ」。
だとすると
ボスジラは“勝ってひと休みさせたい”が本音なのだろうが、大馬主の2頭を惜しげもなく同レースに出走させることについては「秋の東京(連続開催)が終わって長い距離のレースも少なくなるから、そこは仕方がない」と意に介した様子はなかった。
そもそも国枝厩舎の2歳戦略とは?
「無理をしてまで使うことはないけど、使える状況なら早めに使うに越したことはないし、それが今の流れ。“何回の調教より1回の競馬”ってやつだよ。ただ競馬を使える状況なのか。その見極めは大事になってくる。2頭とも
ディープインパクト産駒で血統的な裏付けがあるし、レベルも高い馬たちだからね」
要は両馬ともに今が使う時と判断したからこその「2頭出し」なのだろう。果たしてどちらが先に2勝目を挙げることになるのか。将来性豊かな国枝厩舎2騎の走りに注目したい。
(立川敬太)
東京スポーツ