今年、70回を迎える
阪神ジュベナイルフィリーズ。登録馬には父や母のファンだったひとも多いはずで、子供の活躍も楽しみのひとつだろう。1995年に女傑を倒し女王の座に就いた馬も、繁殖として多くの優秀な産駒を送り出した。今回の「GI列伝・阪神JF」は、
ビワハイジを振り返る。
■4番人気からの鮮やかな逃げ切り勝ち
1995年の阪神3歳牝馬ステークス。1番人気は2戦2勝の
イブキパーシヴで単勝オッズ2.2倍という断然の人気を集めていた。以下、2番人気(単勝オッズ5.2倍)は1戦1勝の
ゴールデンカラーズ、3番人気(同6.0倍)は3戦2勝の
エアグルーヴ、そして4番人気(同8.7倍)が
ビワハイジである。
ビワハイジもこの年の最初の新馬戦を勝ち、続く札幌3歳Sは3馬身半差の快勝をおさめ、2戦2勝での参戦だった。しかし、それ以来4カ月ぶりの実戦であったこと、前2戦でコンビを組んだ
武豊騎手が
イブキパーシヴに騎乗したことも、人気に反映したようだ。実は上位人気の4頭はすべて
武豊騎手が騎乗してきており、そのなかから騎乗することになったのが前走レコード勝ちの
イブキパーシヴだったのだ。
ゲートが開き、好スタートから先手を奪ったのは
ビワハイジだった。その外に
エアグルーヴ、
イブキパーシヴは4番手の内につけた。道中はスローペースに落としてマイペースの逃げを打つ
ビワハイジ、それを見ながら2番手を進む
エアグルーヴ、
イブキパーシヴも4〜5番手で虎視眈々と機をうかがう。直線を向くと後続が
ビワハイジを捕らえにかかるが、その差は縮まらない。最後に
エアグルーヴが詰め寄るも、
ビワハイジは半馬身差をつけ先頭でゴール板を駆け抜けた。
この年、1月に起きた阪神・淡路大震災の影響で阪神競馬場は開催できず、京都や中京での代替開催が続いていた。阪神競馬場での開催はこのレースの前日から。再開後初の重賞が阪神3歳牝馬Sというなかで、
ビワハイジは無傷の3連勝でGI制覇を果たしたのである。
その後の
ビワハイジは故障も重なり100%の力を出せずに現役を終えたが、繁殖にあがるとその能力の高さを産駒に伝えていく。
2005年の
京成杯で
アドマイヤジャパンが産駒の重賞初勝利をあげると、
ブエナビスタは2008年の阪神JFで産駒のGI初制覇とともに同一GI親子制覇を成し遂げた。そしてGI6勝の名牝として名を馳せる。阪神JFは
ジョワドヴィーヴルも制したし、重賞は
アドマイヤオーラ、
トーセンレーヴ、
サングレアルも勝ち、6頭で15もの重賞タイトルを獲得した。
タイトルホースのみならず、2015年に22歳で繁殖生活を終えるまで、12頭を出産し10頭が勝ち上がっており(地方を含む)、歴史に残る名繁殖牝馬となった。
ところで、1995年の阪神3歳Sは、のちに重賞馬の母となる馬が
ビワハイジのほかに4頭出走していた。
2着の
エアグルーヴは
アドマイヤグルーヴ、
ルーラーシップのGI馬や、
フォゲッタブル、
グルヴェイグの重賞勝ち馬を出している。5着の
ロゼカラーは、
ローズバド、
ローゼンクロイツが重賞を勝った。そしてこの2頭には、孫の代にGI馬が誕生している。6着の
ゴールデンカラーズも
チアフルスマイル、9着の
シーズグレイスにも
シャドウスケイプという重賞勝ち馬がいる。
これをもって、1995年の阪神3歳牝馬Sを伝説のレースと呼ぶファンも少なくない。