今年の
朝日杯FSに出走予定の無敗馬4頭のうち、2戦2勝馬は2頭。今回の「
朝日杯FS列伝」は2戦2勝から頂点に立ち、父産駒に初のGI勝利をもたらした1994年の
フジキセキをお送りする。
■サンデー産駒繁栄の礎を築いた2歳チャンピオン
さまざまな種牡馬記録を塗り替え、日本競馬の生産界に一大
センセーションを巻き起こした
サンデーサイレンス。その初年度産駒67頭のうちの1頭が
フジキセキだった。
デビューは1994年夏の新潟芝1200m。出遅れながらリカバーして好位まで上がると、直線は少し気合いをつけた程度で後続を8馬身突き放した。ゴール後、某局の実況では「また
サンデーサイレンス」といわれたが、このころの新馬戦は
サンデーサイレンス産駒が続々と勝ち上がり、注目度は日に日に高まっていたのである。
2戦目は距離延長となる京都芝1600mのもみじSへ。道中中団から徐々にポジションを上げ、直線は馬場の中ほどを伸びるが、このときも気合いを入れただけでレースレコードを叩き出した。また、鞍上の
角田晃一騎手は、追いすがる
タヤスツヨシの脚色を振り返って確認するほどだった。このレースは、
タヤスツヨシと
サンデーサイレンス産駒のワンツーフィニッシュを決める。
そして迎えた3戦目が、2歳王者決定戦。それまでの2戦でステッキをほとんど使われていなかった
フジキセキは、本気で追われたらどれだけ強いのかという期待を抱かせ、それは単勝オッズ1.5倍からも見て取れた。10頭立ての2番人気(単勝オッズ4.3倍)は外国産馬
スキーキャプテン。この馬も阪神芝1600mの新馬戦と京都芝1400mのオープン・京都3歳Sを連勝して、ここへ乗り込んできた。以下、3番人気(同7.7倍)に
トウショウフェノマ、4番人気(同7.8倍)に
コクトジュリアン、5番人気(同14.7倍)に
マイティーホースが続いたが、この5頭はすべて2戦2勝の無敗馬だった。
小雨が降りモヤに包まれるなか、ゲートが開いた。2頭の先行争いからハナを取ったのは
ニッシンソブリン。最内枠からスタートした
フジキセキは3番手の内、
スキーキャプテンは後方2番手を進む。直線を向き、内をすくった
フジキセキが先頭に躍り出た。そのまま抜け出すかと思われたところで、外から
スキーキャプテンが猛追、芦毛の馬体はひと追いごとに漆黒の馬体と差を縮めていく。しかし、最後は漆黒の馬体、
フジキセキがクビ差の先頭でゴールした。
僅差の勝利に見えたが、のちの角田騎手によれば手ごたえは十分で余裕があったという。道中は掛かり気味でラチにぶつかりながらの追走だったそうだが、「エンジンが違うという感じで、加速するときはすごかった。着差以上に強かったと思う」と語っている。このときもほとんどステッキは入れていなかった。
翌1995年、
弥生賞で無傷の4連勝を飾った
フジキセキだったが、その後に左前屈腱炎を発症し
皐月賞を前に引退。底を見せぬままターフを去ったクラシックの大本命は、“幻の三冠馬”と呼ばれた。
この年、
皐月賞を
ジェニュイン、ダービーを
タヤスツヨシが制し、以降
サンデーサイレンス産駒は隆盛を誇る。1994年の第46回朝日杯3歳Sで同産駒初のGI勝利を果たした
フジキセキは、そんな
サンデーサイレンス時代の先駆けなのである。