小雨が舞うなかゲートが開き、第70回
朝日杯FSの出走馬15頭がターフに飛び出した。
出遅れが心配されていた、
クリストフ・ルメールが乗る1番人気の
グランアレグリアはまずまず速いスタートを切った。
ミルコ・デムーロの
アドマイヤマーズもポンとゲートを出たが、それらを制して
イッツクールがハナに立った。
道中は、逃げる
イッツクールの2馬身ほど後ろに
グランアレグリア、そこから2、3馬身離れた3番手に
アドマイヤマーズがつけた。
グランアレグリアも
アドマイヤマーズもやや引っ張り加減の手応えで進んでいる。
前半800m通過は47秒7。それほど速くはない平均ペースだ。
先行集団はそのままの馬順で4コーナーを回った。
直線に入り、
グランアレグリアが先頭の
イッツクールの外から並びかけようとしたとき、さらに外から
アドマイヤマーズが一気に加速し、
グランアレグリアに馬体を併せてきた。
けっして大きく内に切れ込んだりはしていないのだが、威圧するには充分な並びかけ方だった。
びっしり併せる形になったのは数完歩、ほんの数秒だったが、牡馬が牝馬を負かすにはこうするのだ、というお手本のような形になった。
そこから
アドマイヤマーズは力強く末脚を伸ばした。
「思っていたとおり、
グランアレグリア見ながらレースができた。直線もいい脚を使って、負ける気がしなかった」とデムーロ。
グランアレグリアは、ラスト200m手前で
イッツクールをかわし切って、
アドマイヤマーズと馬体を離すと、また盛り返した。
しかし、伸びつづける
アドマイヤマーズを脅かすところまではいかなかった。
道中は好位の内につけていた
クリノガウディーが馬場の真ん中に持ち出し、猛然と差を詰めてきたが、
アドマイヤマーズは、後ろから来られれば、来られただけ伸びるという、
父ダイワメジャー譲りの勝負強さで抜かせない。
アドマイヤマーズが、2着
クリノガウディーに2馬身差をつけ、先頭でフィニッシュ。無傷の4連勝で、2歳王者の座に大きく前進した。
グランアレグリアは2着から半馬身差の3着。1馬身半差の4着は、
武豊の
ファンタジストだった。
「強い。どんどん成長しているし、頭がいい。距離はもう少し伸びても大丈夫」
父の背を知るデムーロとのコンビで、来春も楽しませくれそうだ。
(文:島田明宏)