秋の古馬GIシリーズ、
天皇賞(秋)と
ジャパンC。それぞれのレースにおける1、2、3着馬は、いずれもすべて4角7番手以内の馬が独占。12、14頭とやや少なめの出走馬だったとはいえ、前目で運ぶ馬にとって圧倒的に有利となる競馬が続きました。
逆にいえば、今の古馬路線のGIに出走するような一線級のメンツにはペースが速くなる要素がないこと。さらに、東京芝の高速馬場も相まって縦長になりつつもスローペースに落ちやすく、先行馬有利の状況ができあがっていたといえます。
しかし、
有馬記念が行われる中山競馬場は東京のようにグッと構えて終いを生かすよりも、むしろ3〜4コーナーから早目に仕掛けることでコーナーから加速することが必須のコース。各騎手の動き、枠順や全体の並びがポイントになることは間違いありません。
今回のメンツで逃げる可能性があるのは
キセキと
プラチナムバレット、
ベイビーステップ、
オジュウチョウサンです。しかし、
キセキと
オジュウチョウサンを除く2頭は賞金不足で除外対象。そういったことを考えれば、競り合う可能性は極めて低く、確実にスローペースになるといえるでしょう。ただし、今回は東京ではなく中山での一戦。コーナー6つの分、2周目の向正面で仕掛けることも可能。
さらに早い段階で1周目のスタンド付近で動いていくこともできます。今年に関していえば、ペースは誰が見てもわかること。問題は“枠などを踏まえたうえでどの馬が早目に動いていくのか”。これが的中するうえで、最も重要なポイントになります。ただし、昨年のように誰も動かないパターンも十分にあり得ます。そのような形になると、先行勢がそのまま押し切る
ジャパンCや
天皇賞(秋)と似たような結末となるでしょう。
では、今年のレースで動いていくのはどの馬なのか。そのカギを握る馬が波乱の立役者となる可能性は高いですし、レースが動く、差し馬にもチャンスが生まれる点においても必要不可欠な存在となります。
まず、動く馬の条件を満たすうえで大切なことが3点あるので、そこに触れたうえで筆者の考える狙い目とVポジションを提示しようと思います。その3つのポイントとは、積極的な競馬が期待できるジョッキーが騎乗していること。大舞台でも動じないレースができ、中山での経験値が高いこと。上位人気に支持される有力馬ではないこと。以上の3点となります。
上記の3つはすべて騎手の心理面で共通する部分がありますが、
有馬記念という大舞台で自ら動いてレースを作るということは成功すれば称賛されます。しかし、もしそれで馬が次走以降折り合い面で不安が出たり、大敗してしまう、馬のリズムが崩れることになれば騎手自身の評価にも関わってきます。
すべての騎手に攻める度胸があれば良いですが、人気馬に乗れば乗るほどファンの期待を背負うのでプレッシャーが掛かってくる。これはどのスポーツにでもいえることでしょう。そういった状況で、動きやすいのはやはり何らかのパンチがなければ勝ち負けできない馬、中間層で人気の盲点となっている馬です。
また、人間は知り尽くした場所ほど基本的には自信を持って対応することができます。幾多の大舞台を経験し、1レースでも多く中山競馬場で騎乗経験がある騎手のほうが積極的に動くという点においては、良い方向に働く可能性は高くなるでしょう。
果たして、上記の条件を満たした馬がいるのか。筆者が考える今年のキーとなる馬は、
ミッキースワローです。まず、前走の
ジャパンCについては4角13番手と絶望的なポジションで度外視可能。また、休み明けとゲートに不安があるぶん、高速馬場で直線の上がり勝負となる東京コースとの相性がイマイチだったといえます。
そのなかでの5着は非常に価値のある内容だったでしょう。さらに、今回も関東のベテランで中山コースを知り尽くした
横山典弘騎手が騎乗。実際、1月の
AJCCでは早目に動く競馬も見せており、大舞台での積極性にも期待できることを考えれば、条件が揃ったここはアッといわせるはず。一発思い切ったレースをする可能性が最も高いのはこの馬でしょう。
ただし、そうはいっても4角で後方にいる馬が届くような展開になる可能性は非常に低いといえます。また、当日の天候にもよりますが、今の中山は直線こそ外目が良いものの、基本的にはロスなく運ぶ形がベスト。Vポジションは逃げ馬、ロスなく運ぶ先行と差し馬、3〜4コーナーで6番手以内の外目を運ぶ馬となります。
やはり自在性のある
レイデオロや
シュヴァルグラン、先行力のある
キセキが大きく崩れるとは考えにくいレースです。筆者の注目馬、
ミッキースワローの動き出しのタイミング、枠、当日の天候や馬場状態にも注目したうえで、最終的な予想の組み立てを検討したいところです。
(文=倉本匠馬)
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