“奇跡の復活”-。日本中の競馬ファンが驚かされたレースだった。
平成時代の
有馬記念名勝負を振り返る「平成有馬列伝」。平成5(1993)年の
有馬記念を制したのは、前年の
有馬記念11着以来、364日ぶりの実戦となった
トウカイテイオー。1年前の雪辱を果たすとともに、
父シンボリルドルフ(84、85年)との同レース史上初の父子制覇を達成した。
◇ ◇
単勝1番人気は、その年の
菊花賞馬
ビワハヤヒデ。
テイオーは4番人気に支持されたが、決して前評判は良くなかった。何しろ1年ぶりのレースが、G1で
有馬記念。マスコミはこぞって軽視したが、ファンは見捨てていなかった。
その熱い期待に応えるかのような激走だった。道中は馬群の中団を追走し、2周目3コーナー付近から徐々に進出。直線入り口で早くも先頭に立った
ビワハヤヒデに一歩一歩詰め寄ると、そこから先は2頭によるマッチレース。二度三度、馬体が激しくぶつかり合う。そして、経験で勝る
テイオーが、最後は半馬身差をつけてゴールを駆け抜けた。役者が違う、と言わんばかりに。無念の左後脚骨折から1年、まさに奇跡の復活劇だった。
管理した松元省一元調教師は、こう振り返った。
「ファン投票(4位)はとても励みになりました。応援してくれているファンのためにも頑張ってほしいと、送り出しました」
多くの競馬ファン、関係者に強烈な印象を残した
グランプリとなった。
提供:デイリースポーツ