有馬記念前日の土曜。美浦で朝追いの最中、
藤沢和雄調教師が興味深い話を伝えてきた。
「
レイデオロを来年も走らせるなら、
ジャパンCを
スキップしたのは悪くない選択だよ。たとえば30年前の外国産馬。いわゆるマル外馬はたとえ二流血統でも、当時の日本生産馬とは根本的なスピードが違った。
だから走るんだけど、勝てるからって明らかに皆がレースを使い過ぎていたんだ。ダメージが蓄積すれば、そりゃあ、いずれ走らなくなる。すると今度は皆が口を揃えて言いだすんだ。“やっぱり外国馬は早生(わせ)だ”って。違うだろって話でね」
外車は早熟――。思えば当時、その流説をマスコミも含めて誰もが「真理」として受け止めていた。因果関係を追求せず、相関関係のみで事実を推し量ることの危険性を、トレーナーは雄弁に伝えてくれたわけだ。
もっとも素材を磨耗しないという意味では2歳GIも、その立ち位置を危うくする。昨年の
朝日杯FS優勝馬
ダノンプレミアムと
ホープフルS優勝馬
タイムフライヤーは、今年クラシックで輝きを放てずじまい。外野がそこに因果関係を見いだすことは簡単ではないが、少なくとも、その後は「未来」や「希望」と離れた場所での奮闘が続いている。
「ミルコ(デムーロ)の馬はメチャクチャ強いと思う。勝つのは難しいけど、馬場が悪くなれば、
アドマイヤジャスタにもチャンスはあるよ。競馬は何があるか分からないからね」
有馬当日の中山で、
クリストフ・ルメールが
ホープフルSの展望をこう口にしていた。主役として敬意を表すのは、日米
オークスを制覇した
シーザリオを母に持つ
サートゥルナーリア。素材の良さと高い完成度を口にする陣営も、当初から目標をここに置いていたことだろう。何より注目すべきは
サートゥルナーリアの“余力”だ。デビュー戦、2戦目の萩Sともに追うところなしの楽勝。ここも余力残しで勝てるなら確かに来春が見えてくる。
だが、昨年に倣えば、
タイムフライヤーと同じく5戦目でGIを迎える
ニシノデイジーこそ狙い目のような気もする。
「前走(東スポ杯1着)の12キロ増は成長分。今回はさらに体が増えているかもしれない」と
高木登調教師が言えば、主戦の勝浦正樹も「結果的に重賞を連勝しているが、まだ完成された感は全然ない。今回もこれまで同様、勝ちにいかない乗り方でいいのかな」
今回に限れば、4戦のキャリアが大きな武器となりそうなムードがある。とにもかくにも…。レース名にたがわぬ優勝馬の飛躍を来年こそは願いたいものである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ