人は何か違和感を持ったとき、どのように確認し、軌道修正していくのだろうか? 最も簡単な方法は同じことを繰り返し、再び違和感を持つかどうかをチェックすることだろうが、その逆も確認作業になるらしい。
そんなことを考えたのは、
チャンピオンズCで5着に敗れた
オメガパフュームが、同じ中京ダート1800メートルの
東海Sではなく、大井2000メートルの
東京大賞典から
フェブラリーSへのローテーションを選択したため。賞金を持ち過ぎている馬が他馬よりも重い斤量を嫌い、前哨戦である
東海S、
根岸Sを避けるパターンはよくあるが、
オメガパフュームなら55キロベースからの1キロ増(56キロ)。普通に
東海Sを
ステップにしても問題なかった。管理する安田翔調教師も「正直に言えば、
東海Sを考えたことはありました」と。
しかし、その決断をせずに強敵相手の
東京大賞典に向かったのは、前述したような発想が安田翔師の頭の中にあったためだという。
「手前を替え切れなかった
チャンピオンズCが少し行儀の悪い走りでしたからね。同じことを
大井競馬場でもするのかどうか。それを確認したかったんです。仮に大井でもそのような走りをするのであれば、根本的な問題として対策を考えなくてはならないし、そうでないのであれば、中京コースが理由ということになりますよね? 行儀の悪いレースをしたコースで
バランス良く走れなかった場合、その不安を抱えたまま
フェブラリーSへと向かうことになるじゃないですか。それはさせたくなかった」
幸いにして
東京大賞典ではしっかりと走り、
ゴールドドリームを差し切る好結果を得たが、タイトルを獲得したことだけが良かったわけではない。抱えた課題を持ち越さなかったことが一番の収穫だったのだ。
ちなみに安田翔師は父の安田隆キュウ舎で調教助手をしていた時代に2011年
トランセンド、13年
グレープブランデーと2度の
フェブラリーS制覇に立ち会っているが、前者はJCダートからの直行、後者は
東海Sを
ステップにしている。今回の
オメガパフュームとは異なるローテーションだが、参考にしたのは日程ではなく、当時の経験だ。
「重要なのはそこに至るまでの過程であり、馬によって違いが出るのは当たり前。
オメガパフュームに関して言えば、
東京大賞典を使った段階で、年内のどこかをひと叩きするという考えは消えました。当時の経験が参考になっているところはありますよ」
府中の1600メートルとは似ても似つかない
東京大賞典からの参戦。そこに意味を見いだす若きトレーナーの姿勢に一票を投じてみたくなった。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ