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JRAが打ち出す一手−業界の働き手減少の歯止めとなるか

デイリースポーツ
  • 2019年02月19日(火) 17時13分
 競馬界が変革を迎えようとしている。JRA競馬学校がこれまで“満28歳以下”に限定していた厩務員課程の年齢制限が、今年からなくなることが決まった。

 年齢制限の撤廃による業界への影響は決して小さくはない。育成牧場に10年以上勤務した経験のある筆者は、その間に年齢制限により夢を断たれ、馬の仕事そのものから離れていった牧夫を何人も目の当たりにしてきたからだ。JRA厩務員になるための条件に“競馬学校卒業”が定められている以上、それも仕方ないと納得するしかなかったが…。

 なぜ、今になってルールが変わるのか-。JRA競馬学校教育課は「調教師会からの要望です。年齢で採用を制限する一般企業が、最近はなくなってきているのも理由のひとつ」と説明し、その上で「門戸が広がったと言っても、合格者のレベルが低くなるわけではありません。今回から馬術競技でオリンピックを目指すような人でも参加できるわけですから。受験者が増えてレベルが上がってほしい」とした。

 そして年齢制限の撤廃以外にもいくつかの変更点がある。“牧場で競走馬の騎乗を1年以上経験すること”とあった条件が、“競走馬・乗馬の騎乗経験1年以上”に緩和され、大学馬術部の新卒が牧場勤務を経由せずとも受験できるようになった。他にも競馬学校卒業までにかかる費用が約20万円減額され、半年間の在学中に無収入になるという金銭面での負担も減らされている。

 ピーク時には約500人もいたJRA厩務員課程の受験者は、最近では約70人まで減少。このまま減り続ければ定員割れを起こす可能性がある、と危惧する声も挙がっていたという。業界全体における働き手の減少…そんな状況に歯止めをかけるべくJRAが打ち出した一手。既に、牧場でキャリアを積んだ30〜40代スタッフが受験するという動きがあり、さらに地方競馬の厩務員がJRAを目指すことも十分に考えられるが、果たして…。

 馬の世話をする仕事は世間から“3K(きつい、汚い、危険)”とされ、厳しい職場だと言われている。しかし、腰を悪くするまで競走馬に乗り続けていた筆者は、そこまでつらい仕事だとは思わなかった。競走馬に乗ることは奥が深く、達成感もある。そして何より、担当馬がレースで勝った時の喜びは計り知れないものがあった。

 最近の藤田菜七子フィーバーなど、どうしても華やかな面ばかりが取り上げられてしまうが、その裏にどれだけの“支える手”があるのか-。我々マスコミは、そこもしっかりと伝えていくべきであり、それが結果としてこの業界を目指すきっかけになればとも思う。今回のJRAの改革が、魅力ある業界、活気ある業界への第一歩となることを期待したい。(デイリースポーツ・刀根善郎)

提供:デイリースポーツ

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