開業初年度の2016年、
ワンアンドオンリーで
ジャパンCに挑んだ(8着)橋口調教師は、並み居る強豪が揃った中でも、パドックでひと際目立つ馬=
キタサンブラックにとてつもない威圧感を感じたという。
「“なんだ、この馬は”って。びっくりしましたね。ほかの馬とは違って見えました。体が大きくて、迫力があって…。“こういう馬がJCを勝つんだろうな”って。実際、あの強い勝ちっぷりでしたもんね」
馬体の良しあしが必ずしも競走成績に結びつくわけではないのは、見た目がパッとしなかった
ディープインパクトや
ブエナビスタなどを見れば明らかだが、鍛え抜かれた
キタサンブラックのように、馬体が研ぎ澄まされ、迫力を増すとともに、競馬ぶりがより力強くなっていったケースも、当然ながら数え切れないほどある。
「前からいい馬でしたけど、今回の休養でさらに良くなりました。あの時の
キタサンブラックに似ていると思えるくらいに…。とても牝馬とは思えない体をしてますよ」
橋口調教師がこう絶賛するのはGIII
フラワーC(16日=中山芝内1800メートル)に出走する
エールヴォアだ。3歳春を迎えたばかりの牝馬が
キタサンブラックに似ている? 多少のひいき目はあるのだろうが…。馬房で間近に見た感じでは、500キロを超える雄大な馬体、張り詰めた筋肉は、確かにとても牝馬のそれには思えなかった。
距離適性も含めて
フラワーCに照準を定めたとなると、この春一番の目標は
オークスなのだろう。が、わざわざ
ミルコ・デムーロに騎乗依頼したあたり、ここで賞金を加算して、一気に
桜花賞&
オークスの出走ラインのクリアを狙っているのは明らかだ。
「ミルコには
アクアミラビリス(
エルフィンS勝ち馬)がいますけどね。ここでミルコがどっちに乗るか迷うぐらいの走りを見せられれば」(橋口調教師)
ひと息入れたことで馬体がグンと成長した
エールヴォアが、トレーナーのもくろみ通り、
ミルコ・デムーロを魅了するほどのパフォーマンスを発揮するようなら…。牝馬クラシックの有力候補として、土壇場で名乗りを上げることになる。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ