常識とは都合のいい思い込みにすぎないのか。そう思わせるのが昨今のメジャーリーグだ。かつて小技を駆使した2番に座るのは、今やアーロン・
ジャッジ、マイク・トラウトといったリーグを代表する強打者。そこに求めるのはチャンスメイクでなく、ズバリ得点力である。
そして今、日本の競馬も同様の
スタイルが確立されようとしている。昨年の3冠牝馬
アーモンドアイは
トライアルすべて非出走。
菊花賞を制した
フィエールマンは3か月半ぶり、そして先週の
桜花賞は
グランアレグリアが史上最長ローテ(中111日)で制した。メジャーリーグが「2番最強打者説」なら、
中央競馬は「ぶっつけ出走最強説」。共通するのは、無駄な
ステップを排した即効性に他ならない。
その意味で、今週のGI
皐月賞も象徴的ではあろう。3戦無敗の
サートゥルナーリアはGI
ホープフルS(1着)以来3か月半ぶり。人気でこれに続く
ダノンキングリー、
アドマイヤマーズも
共同通信杯以来2か月ぶり。いずれも
トライアルという
ステップを踏まずに本番へ駒を進めてきた。むろんトレンドに倣えば、この3頭で決まる可能性も低くないのだが…。
穴党が着目するなら、むしろメジャーでなく日本の野球
スタイルかもしれない。野村克也氏いわく「弱者の兵法」。TR
弥生賞4着から挑む
ニシノデイジーの姿に、強者に勝つために模索した軍器、軍略を感じるのも事実である。
「道悪は合いそうなイメージだったのに、
弥生賞(重馬場)は案外でしたね。頭の高い走りは馬場を気にしたようでもあり、ハミの取り方も本来のものではなかった。結果、タメが利かないまま終わってしまいましたから」
これは
高木登調教師の前走の敗因分析。
弥生賞は折り合い面を考慮して、ハミを
トライアビットに替えて挑んだが結果は激しく裏目に。1番人気を裏切ったが、これが本番でなかったのは不幸中の幸いだろう。
「今回は普通のハミに戻して、
シャドーロールを装着する予定。以前に比べて乗りやすくなっているし、何よりこの中間は動きが変わってきた。以前は一杯に追って出た数字(5ハロン67秒)が馬なりで出ているように、トモの状態も含めて前走を叩いてパワーアップしているのは確かです」
GI
ホープフルSは後手に回り、追い出しが遅れる形で
サートゥルナーリアと0秒3差3着。その着差を埋めるため試行錯誤した経緯こそズバリ「弱者の兵法」である。TRが“犠打”ならば、その敗戦がチャンスメイクとなると見るのだが、果たして結果は?
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ