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アドマイヤマーズ 負けたから見える戴冠への道/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2019年04月12日(金) 18時00分
 負けたことのない馬の負けパターンをイメージすること。それは簡単なようで意外と難しい。昨年暮れのホープフルSを走る前のことだ。

「仮にサートゥルナーリアが負けるなら、どんな展開になったとき?」

 そんな失礼な質問をぶつけてみたが、それに対する辻野助手の答えは「スローペースで周囲を囲まれ、馬群の中に閉じ込められる形になったときですかねえ」

 結果はご存じの通り。彼の危惧に近い状況になったにもかかわらず、サートゥルナーリアは馬混みから楽に抜け出してきた。辻野助手にイメージしてもらった前記のシチュエーションは、誰もが考えるサートゥルナーリアの負けパターンだったはずだが、それをあっさりと覆してしまったわけだ。だが、これさえも予想されたことだった。

 実は前記のコメントをした後に「それでも負けるシーンは想像できませんけど」と辻野助手は付け加えた。正直、サートゥルナーリアが負けるシーンは記者も想像できない。それは今回も同様だ。

 逆に“敗戦”を経験することで、その馬に合わない展開や状況などが明確になることもある。先週の桜花賞を勝ったグランアレグリアにとっては朝日杯FS3着がそうだったろうし、そのグランアレグリアを破って2歳王者になったアドマイヤマーズにとっては前走の共同通信杯が、それに当たる。初めての敗戦が自身のストロングポイントをより生かすスタイルに傾倒する“きっかけ”になるわけだ。

「長く脚を使うタイプなのは僕らも分かってはいました。もちろん、マイルに特化した馬に育てるのであれば、前走でも早めにスパートする競馬をしていたでしょう。でも東京への長距離輸送を経験させ、さらに200メートルの距離延長になる皐月賞を意識したとき、相手の出方を待って動く競馬もしておきたかった。この馬のスタイルがハッキリと分かったことは大きいと思いますよ」と大江助手は初の黒星になった共同通信杯を振り返る。

 勝ったダノンキングリーの瞬発力は、アドマイヤマーズのそれをはるかに上回っていた。しかし、後塵を拝してから差が広がったわけではない。後伸びする形ではあったが、しっかりと食らいつき、後続は離した。あの一戦を“試走”と見るなら、成果は十分にあったと考えるべきだろう。

 問題は試走で得た教訓を今回に生かせるか。アドマイヤマーズが最初の目標にするのは、おそらく毎日杯を逃げ切ったランスオブプラーナ。しかし、この馬のタイミングに合わせた追い出しでは、後ろで構える馬の瞬発力に屈してしまう。

「折り合いを欠くような馬ではありませんが、それは自分のペースで走っていれば…の話。ある程度のペースで流していって、積極的に動いていくことになると思いますよ。抜け出すと物見をする馬ですけど、後ろがつついてくれれば、もう一度走る気を出してくれる。強い馬が早めに来てくれたほうが頑張れるタイプですから」(大江助手)

 イメージ化すれば、ミドルペース以上で運び、直線入り口で一気に抜け出す→そこにサートゥルナーリアが襲いかかってくる→並ばれるところまではいくが、前には出させない――。こんなところだろうか。

 こういったイメージがハッキリと浮かぶのも、共同通信杯の敗戦があってこそ。負けたことで開き直れた2歳王者は、やはり無視できない。

(栗東の本紙野郎・松浪大樹)

東京スポーツ

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