「乗り替わりでは
日本ダービーは勝てない」
ずっと言われてきたジンクスだ。実際、1985年の
シリウスシンボリを最後に、乗り替わりでダービーを勝った馬はいない。33年もの長期間、法則が破られていないことが、ダービーにある種の“神秘性”をもたらしている。
「決してたまたまではないと思うよ。ダービーともなれば、出走馬は全てギリギリまで仕上げてくるので、まさに紙一重の戦い。ちょっとしたことが命取りになる。ダービー前のレースは、そこに向けて脚を測ったりと確認することも少なくないし、癖を知った同じ騎手で臨むほうがいいのは間違いない」とは2013年のダービー馬
キズナを管理していた佐々木調教師だ。
「
キズナで勝った時、ラ
イバルとして一番恐れていたのは
コディーノだった。でも、それまでずっと乗っていた横山典が(ウィ
リアムズに)乗り替わりになったでしょ。あれでこっちに分があるなと思った。直前でゴタゴタしてしまった印象。果たしてあれがいいほうに運ぶかなって」
05年の
ディープインパクト以来となる、無敗の2冠(
皐月賞&ダービー)を狙う
サートゥルナーリアに見えるかすかな隙といえば、乗り替わりご法度のダービーで鞍上が
チェンジすること。これに尽きるだろう。
特に、騎乗停止のルメールから乗り替わるレーンはまったくのテン乗り。ダービー制覇となれば、乗り替わりの33年どころではない。1954年の
ゴールデンウエーブ以来、64年も途絶えているのだから…
レーンの腕の確かさはここ数週間で嫌というほど見せつけられたが、積み重ねられた歴史を見ると、そう簡単に事は運びそうもない。
「ダービーの重みというものが、そういうふうにさせているのかもしれないね」とは
リオンリオンを出走させる松永幹調教師。
3走前から乗り続ける鞍上・横山典のことを「型にはめないし、何かをやってくれるジョッキー。“ノリが乗るのなら”って、こっちは全てを任せられる」と絶大な信頼を寄せていたのだが…
ナント、こちらも先週の騎乗停止で(息子の横山武へ)乗り替わりとなる事態に。
これで出走順上位17頭のうち8頭が「乗り替わり」で臨むことに。令和初のダービーが新時代のスタートらしく、乗り替わりのジンクスを破る新たなダービー像を描くのかどうか、今から興味が尽きない坂路野郎である。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ