道中のラップタイムに注目し、その増減でコース適性を見極めるラップ予想『ラップギア』。その第一人者・岡村信将氏が、春のマイル王決定戦・
安田記念を
ジャッジ。2強対決といわれる府中のマイル戦で、ラップギアから浮上してきた傾向とは?
【瞬発力より持久力が問われる一戦】
『ラップギア』は2007年発表。時計的な速さ・遅さを一切無視し、“ラップの増減”のみに注目した競走馬の適性
メソッドです。▼7や△2といった簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3つに分類。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利、消耗型のコースでは消耗型が有利となり、重賞やGIなどレースの格が上がるほど有用度が増してくる手法です。
まず
安田記念の傾向を探るために、近年の勝ち馬のラップギア適性値を振り返ってみましょう。
2011年
リアルインパクト【瞬発2:平坦1:消耗0】
2012年
ストロングリターン【瞬発6:平坦4:消耗0】
2013年
ロードカナロア【瞬発3:平坦7:消耗3】
2014年
ジャスタウェイ【瞬発6:平坦3:消耗0】
2015年
モーリス【瞬発3:平坦2:消耗0】
2016年
ロゴタイプ【瞬発4:平坦4:消耗0】
2017年
サトノアラジン【瞬発7:平坦4:消耗0】
2018年
モズアスコット【瞬発2:平坦5:消耗0】
※ラップギア適性値は、各年出走当時のもの
通常、瞬発力のある馬(瞬発の数が多い馬)は人気になりやすく、実際に大レースを勝つことも多いのですが、ハイペースになりやすい
安田記念は少し特殊で、瞬発力よりも持久力の勝負になる傾向にあります。
安田記念に向く馬は【瞬発6:平坦0:消耗:0】のような瞬発特化型ではなく、【瞬発3:平坦3:消耗0】のように平坦なラップもこなせる馬です。それを踏まえたうえで、今年の主な出走馬を見てみると次のようになります。
■2019年
安田記念の主な出走予定馬のラップギア適性値
アーモンドアイ【瞬発5:平坦2:消耗0】
アエロリット【瞬発5:平坦3:消耗1】
インディチャンプ【瞬発4:平坦2:消耗0】
ステルヴィオ【瞬発4:平坦3:消耗0】
スマートオーディン【瞬発4:平坦1:消耗1】
ダノンプレミアム【瞬発6:平坦0:消耗0】
【瞬発6:平坦0:消耗0】と瞬発力に特化している
ダノンプレミアムは、このレースには向かない馬だと考えています。そして、問題は【瞬発5:平坦2:消耗0】の
アーモンドアイでしょうか。恥を承知で打ち明けますと、新馬戦はもちろん、
シンザン記念(GIII)を見ても
桜花賞(GI)を見ても、映像的にはともかく、ラップ的に
アーモンドアイがここまで強い馬だと思っていませんでした。
それが、2400mの
ジャパンC(GI)では唖然とさせられるような強さを見せられることに。2分20秒6のレコードタイムが凄いのではなく、
スーパーラップで逃げた
キセキを難なく2番手で追走し、後方待機時と変わらぬ末脚を見せたことが凄いのです。
しかし、だからこそ逆に今回の距離短縮は少し不安。ハイペースになりやすい
安田記念で、
アーモンドアイはかつてないペースで追走させられることになる可能性も大いに考えられます。3歳限定の1600mとはペースが違い、ラップから想定できる事態は“後方から追い込んで届かず”。
同世代の牝馬相手ならともかく、仮に
ジャパンCで後方からのレースになっていた場合、それでも
キセキを捕らえることはできていたのでしょうか。
ジャパンC予想はそういった展開を想定しての◎
キセキだったのですが、今回、その命題に対する回答が得られるのではないかと期待しているのです。
(文=岡村信将)