降りつづく雨が福島芝コースを不良のコンディションにしていた。開幕週とはいえ、レースを重ねるにつれ、4コーナーや直線では、内のほうが傷みはじめているように見えた。
第67回
ラジオNIKKEI賞のゲートが開いた。ちょうど1年前に福島のこのコースで未勝利を勝った
ダディーズマインドがハナを切った。
2番人気の
ディキシーナイト、
ブレイブメジャー、内の2番枠から出た
マイネルサーパスらがつづく。
田辺裕信の
ブレイキングドーンは中団より後ろの外につけている。
「1800mでどのくらい追走できるか心配だったのですが、自分から動けるポジションに構えることができました」と田辺。
1000m通過は1分1秒0。
3コーナーに入るあたりから、
ブレイキングドーンが外を回って前との差を詰める。最後方に控えていた
武豊の
ゴータイミングも3、4馬身後ろから同じように外から進出してくる。
ブレイキングドーンが内の馬たちをマクるようにして直線へ。ラスト200m地点で田辺の右ステッキが入った。
ブレイキングドーンは力強く末脚を伸ばすが、内埒沿いを走る
ダディーズマインドをはじめ、内の馬たちも簡単には下がらない。なかでも、終始好位置につけていた
マイネルサーパスの伸び脚がいい。
馬場の真ん中を伸びる
ブレイキングドーンが先頭に立った。内の
マイネルサーパスもしぶとく食い下がったが、
ブレイキングドーンが先頭でゴールを駆け抜けた。
3/4馬身差の2着が
マイネルサーパス、そこから1馬身1/4遅れた3着が
ゴータイミングだった。
「GIホースと走っていた馬ですから、レベルは高いと思っていました。レース前から自信を持って乗ることができました」
テン乗りで、同馬に初めての重賞タイトルをプレゼントした田辺はそう言った。14番という外枠と、馬場状態を味方につけながら、中盤以降は、レース全体を支配しての勝利だった。
福島出身の彼にとって、これが、2014年の
七夕賞以来5年ぶりの地元福島での重賞制覇となった。
かつては「残念ダービー」と呼ばれたが、昨年の2着馬
フィエールマンは
菊花賞、
天皇賞・春とGIを2勝し、2009年の3着馬
ストロングリターンは
安田記念、2007年の2着馬
スクリーンヒーローは
ジャパンカップ、2006年の2着馬
ソングオブウインドは
菊花賞を勝つなど、今や
ラジオNIKKEI賞は「出世レース」になっている。
2、3着馬ばかり出世しているのは不思議だが、ともかく、
ブレイキングドーンをはじめとする上位入着馬の今後も楽しみだ。
(文:島田明宏)