2歳世代最初の
JRA重賞、GIII
函館2歳S(21日=函館芝1200メートル)が早くも行われる。クラシック直結率の高い東京や阪神での早期デビュー組とは別のメンバーが中心になる当レースは、過去5年を見ても2014年の
アクティブミノルが連続開催5週目の新馬Vから連闘で戴冠した以外は、いずれも函館1、2週目の新馬戦でデビューした馬が制覇。福島など他場で勝ち上がった馬の参戦も毎年見られるものの、数ある2歳重賞でも“ご当地色”が特に強い傾向にある。
今年の現地デビュー組で主役を務めるのは、やはり
レッドヴェイパーだろう。予定していた開幕週の芝1000メートルでのデビューは、くだんの禁止薬物騒動の影響で除外になり、翌週の芝1200メートルにスライド。
結果はハナ差の辛勝だったものの、2着
ケープコッドが次走で圧勝しただけではなく、ハナ+5馬身差と大きく水をあけられた3着
メイショウナパワンもまた次走をしっかりものにした。初戦のメンバーの質の高さは保証されており、その豊かなスピード、センス抜群の立ち回りからも、いかにも早期2歳重賞向きのキャラだ。
ただし気になる材料も。デビュー戦が1週ズレた影響か、短期放牧から帰キュウしたのは今月10日。俗に言う“10日競馬”に近い臨戦を余儀なくされる。このあたりが不安材料になる可能性はなきにしも…。そこで担当の岩本助手を直撃した。
「いやいや、馬はいい感じですよ。
リラックスできていて気負いがない。出走が延びた影響は特にないと思っているし、何より、しっかり勝ってくれたことが大きい。デビュー前は前向き過ぎるところがあって心配したけど、競馬ではそういうところを見せずに、しっかりと走ってくれましたから。体は小さいけど(デビュー時412キロ)走りが大きいのがいいところですね」
同じく岩本助手が担当するもう一頭、
ダノンスマッシュは本命視されていたGIII
函館スプリントSに禁止薬物騒動の影響で出走できず“適レース”を失ったのと比べれば、わずか1週間のタイムラグは、ささいなことだろう。
「2歳馬としては出来上がっていて、良くも悪くもキンシャサ(ノ
キセキ)産駒という感じ。乗っていて安定感があるのが最大の長所でしょうか。
スパイクを履いて地面をしっかりつかんでいるような走り。だから(走りが)ブレない」
岩本助手といえば、かつて
ロードカナロアを担当した超腕利き。その言葉だけに説得力がある。
一方で、
レッドヴェイパーの最大のラ
イバルは再び
ケープコッドになるかもしれない。新馬のゴール前は、それこそ勝ち馬をかわしたように見えたほどの脚色で、次戦は5馬身差の圧勝。その勝ちっぷりもさることながら、追走にも初戦時の幼さが抜けていた。
仮に
レッドヴェイパーが何事もなく開幕週に使えていれば、おそらく
ケープコッドも初戦で勝てていたはず。押せ押せのローテになった上に、未勝利勝ちのため抽選対象の身なのは悲運と言うほかない。
「中1週続きは馬には正直、しんどいローテ。前走も最後は“(力を)抜いてくれ”って思っていたんですけど、やっぱり競馬だと走ってしまうんですよね」と振り返ったのは主戦の吉田隼だが、こうも続ける。
「ただ見方を変えれば、2回競馬を使えたことで教えられたこともある。特に初戦は馬群に囲まれた中でも、しまいは反応できたように、負けはしたけど内容の濃いレースだった。あとは当日までのテンション。最終追いに僕が乗ると競馬だと思ってカイバがあがったりするかもしれないので、そのあたりは(高柳瑞)先生と相談したい」
例年、夏の北海道シリーズに参戦している吉田隼は、重賞では3度の2着があるものの未勝利。自身のキャリアも意識した上で「勝てるだけの能力は十分なので」と腕をぶしている。
(立川敬太)
東京スポーツ