当欄でも取り上げた中山開幕週のアスター賞(1勝クラス、芝外1600メートル)は1着
サクセッション、2着
ヴェスターヴァルトのキャロットファーム所有馬によるワンツーフィニッシュ。同門対決が避けられなかったように、昨今の2歳戦は早めの賞金加算に向けた出走戦略が強まっている。次開催の東京&京都は毎週、1勝クラスかオープンのレースがあるにもかかわらず、中山最終週の牝馬限定1勝クラス・
サフラン賞(29日=芝外1600メートル)も多彩な顔触れが揃った。
まずは前述
サクセッションと同じ国枝厩舎の所属で福島芝1200メートルの初陣を飾った
マジックキャッスル(
父ディープインパクト)。ディープ産駒で初戦が芝1200メートルだと“気性に少々問題あり?”と考えてしまいがちだが、レースは好位で折り合いがついて直線は楽々と抜け出す
パーフェクトなもの。
母ソーマジックは3歳時に
アネモネS勝ちからGI
桜花賞3着。現オープンの半兄
ソーグリッタリング(
父ステイゴールド)も勝ち鞍は芝1600〜1800メートルで血統的にも最初から短距離に固執しての出走であろうはずがない。
「本当は1600メートルで下ろしたかったんですけど、ゲートが速くて気持ちも前向きだったので、1600メートルでちぐはぐな競馬になるよりも1200メートルでスピードを生かしたほうが合っているかなと。ところが競馬ではむしろ落ち着いていて、ガーッと行くようなこともなく道中はポジションを取ってしまいの反応も良かった。あの競馬っぷりを見たら少なくとも1200メートルのスペシャリストではない。ウッドの追い切りでも冷静に走れていたし、マイルまでならトップクラスの競馬ができるポテンシャルがある」とは厩舎番頭の鈴木助手。適性を見込んで1200メートルを選択したが、結果はいい意味で想定を裏切り距離の見通しを立てた。
国枝厩舎には
アパパネや
アーモンドアイといった希代の名牝だけでなく数々のスターホースが在籍。“これまでの所属馬に重ねると”との質問に同助手は「昨年の
カレンブーケドール(
オークス2着)に比べても完成度は高い。将来的な距離適性は違うかもしれないけど、坂路の動きだけなら
カレンよりもいいくらい。順調に成長していけば
桜花賞や
NHKマイルCを狙えるくらいの馬になる」。オープン入りは時間の問題だろう。
一方、同じ関東馬で虎視眈々と勝機をうかがうのが
マルターズディオサ(父
キズナ・手塚)。こちらは新潟での新馬戦(芝外1600メートル)で2着の後に未勝利(同)を勝ち上がった。稍重でマークした1分34秒3は、同開催同距離の2歳戦(計10鞍)で次位のGIII
新潟2歳Sより0秒7速い。
手塚調教師は出遅れて後方から追い込んだ前走について「ああいう競馬だと中山では届かない。スタートをきちんと出て好位につけて競馬ができれば、とは思っています」と課題を挙げつつ「(ダートで中央7勝を挙げた半兄
アルタイルと比べて)芝がいいんでしょう。とにかく精神力が強い。
マウレア(
チューリップ賞2着から
桜花賞、
オークスともに5着)に感じが似ているけど、あのくらい馬体がしっかりしているし(牝馬クラシック)路線には乗れると思う」。こちらも陣営は確実に来春を見据える。
ちなみに2着に敗れた新馬戦の勝ち馬は、次戦で
新潟2歳Sを勝った
ウーマンズハート(牝・西浦)。同3着
ビッククインバイオ(牧)は
サフラン賞に出走予定だ。
マルターズディオサの好走は
ウーマンズハートの評価をさらに高めるだけでなく、同世代牝馬のレベルの高さの裏付けにもつながる。果たして今後の牝馬路線の力関係にどれだけの影響を及ぼすか…。いずれにしても気迫のこもった熱戦が期待できそうだ。
(立川敬太)
東京スポーツ